ifの奇跡
「莉子……」

何度も呼ばれるその名前に、答えることもできないほど溶かされていた私の口からは恥ずかしいほどの吐息が漏れていくだけ。

私たちを淡く照らすオレンジ色の光が、幻想的な光に見えた。

今日は冬吾とはもちろんそのつもりで覚悟はして来た。

だけど、やっぱり綺麗な体で彼との初めてを迎えたい。


「…とーご……シャワー浴びた…い…」


やっとの思いでそのセリフを言った後、冬吾の動きがピタリと止まった…。

ヤバイ……空気壊した!?

だけどやっぱりそこは譲りたくなかったし…

そう思っていると


「悪ぃ…俺、がっつき過ぎた。嬉し過ぎてつい…ゴメンな。」


そう言って私の髪を優しく撫でた冬吾に


「ううん…私も嬉しいのは同じだから謝らないで…」


そう言うと、目の前の冬吾の顔がクシャリと歪んで抱きしめられた。


「またそうやって俺を煽る…。でもありがとう。」


彼の腕に解放されると、とりあえず風呂沸かすから入ろうと言った彼に続いて部屋の中に入った。

前回同様、綺麗に片付けられている部屋のソファに座らせてもらいお風呂が沸くと先に入らせてくれた。

全てを念入りに洗った後、バスタブに浸かりながらこの後の私たちを想像して顔が余計に火照り出した。

もう少し長風呂だったら間違いなくのぼせていたと思う。

真っ赤な顔でお風呂から上がると、持参して来たハトムギベースの化粧水を肌にペチペチと叩き込んだ。

ヒンヤリとした冷たい感触が火照った頬の熱を冷ましてくれる。

スーーッと熱が引いていく感覚が気持ち良かった。
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