不思議な眼鏡くん

扉が閉まると、生まれて初めての空間に立っていた。

部屋の大半を占める、大きなベッド。青白い明かり。

ベッドの脇に立つ響が、動けない咲を振り返った。ジャケットを脱ぎベッドに放り投げる。
それから、ネクタイを指で緩めながら、咲のところへ戻ってきた。
髪をかきあげる。

彼の黒い瞳。
吸い込まれる。

咲は頭が朦朧としていて、自分の状況が理解できていなかった。

「優しくするよ」
響が咲を見下ろす。彼がこんなに背が高いだなんて、気づいてなかった。

「最初は、ね」
咲の首の後ろに手を入れた。

「わっ」
思わず大きな声が上がる。

響が笑った。

その笑う頬の上げ方が、会社のそれとは全然違う。

咲を混乱させ、動揺させ、誘惑する。

「俺、シャワー浴びてきてもいい?」
咲の耳のすぐそばで、響が尋ねた。

空気を振るわせる声の振動に、背中がぞわぞわしてきた。とっさに自分の耳をかばう。

響はまた軽く笑うと、咲の返事を待たず、ベッド脇のバスルームへと入っていった。
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