Spider
「帰りましょうか」

「あ、はい」

手を借りて立ち上がると、彼はシートやゴミを片付け始めた。

……さっきまで見せてた熱っぽい顔が嘘のように、事務的な顔で。

彼が片付けてるあいだ、俯いて唇を噛んでいた。

中途半端に火をつけられ、燻っている身体。

なのに平常心に戻った彼が、……憎い。

「どうかしましたか?」

片付け終わった彼に顔をのぞき込まれた。
思わずシャツを掴んで縋るように見上げる。

「……どうして、欲しいですか?」

いつもの、事務的な彼の顔。

「……」

恥ずかしくて云えなくて、レンズの奥の瞳をじっと見つめた。
無表情……なのに。
その瞳だけは蠱惑的な光を宿して揺れている。
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