Spider
「ほんとに簡単に、入るんですね」

彼は感心しているが、私にはなんのことだかわからない。
それ以前に、私の胸のふくらみにふれる彼の手に、半ばパニックになっていた。
そんな私の気持ちをよそに、彼の手がゆっくりと動く。

次第に荒くなっていく自分の吐息。
漏れそうになる声を、必死に噛み殺す。

「どう、ですか……?」

耳にかかる彼の吐息も熱い。
自分を否定したくて首を振ってみたところで、荒い吐息が肯定してる。

遠くに聞こえる花火の音。
耳に届く、ふたつの荒い吐息。
目に映る花火はぼやけてる。

……もっと。
もっと、欲しい。

そんな私の思いとは裏腹に、不意に彼が、浴衣の中から手を抜いた。

「終わっちゃいましたね、花火」

「……え?」

見上げると。
夜空は星だけになっていた。
響いていた音も聞こえない。
屋台に響いていた喧噪は、相変わらずだったけれど。
< 14 / 16 >

この作品をシェア

pagetop