Spider
せっかくの花火大会。
浴衣まで用意した。

しかし、彼となにを話していいのかわからない。
しかも気合いの入りすぎた浴衣を着るは恥ずかしい。

……けど、ドタキャンはできないし。

迫ってくる時刻に、重い腰を上げる。

……せっかく買った浴衣ももったいないし。
誤解されてもいいや。
着たいもんは着たいんだから。

開き直ると本を片手に、浴衣を着始めた。

 
待ち合わせの駅に行くと、すでに彼は待っていた。

改めて見ると背が高い。

私服が意外とダサい、とかだと今日は気楽に過ごせそうな気もしたが、なにげにおしゃれ。

「すみません、お待たせして」

「いえ。
俺もいま来たところなので」
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