行雲流水 花に嵐
「……上月様ぁ……」

 宗十郎の背に手を回して、おすずが身体を仰け反らせる。

「裏の、亀屋ってぇ見世を知ってるだろう?」

「知ってるけど……。やだよ、上月様。あんなところに行かないで」

「あんなところ? どんな見世なんだい?」

「酷い見世だって……。女子も大したことないのに何でもやたらと高いし、何かまともに相手もしてくれないとか。まだ女になってないような子供とかもいるらしいよ」

「ほぉ」

「出る酒も水で薄めた酒だっていうし、それに薬とか入れられて、無理やり泊まらされたりするんだって」

「お前は俺に、それをしようとしたわけか」

「あたしはほんとに、上月様が好きなんだもの。すずは上月様のためなら、何だってやるよ。ね、上月様、お金はあたしが持つから、泊まって行って」

 自ら帯を解きながら、おすずが宗十郎を奥の布団に誘う。

「そこまで落ちぶれてねぇよ。女子にたかる気はねぇ。牢人とはいえ、一応武士だからな」

 宗十郎が布団に座るなり、おすずが抱き付いて来た。
 久しぶりの逢瀬だからか、がむしゃらに宗十郎を押し倒す。

 唇を重ねながら、おすずは宗十郎の袴の帯を解いた。
 四年前は男も知らなかったおすずだが、今や宗十郎に馬乗り状態だ。
 こういう商売をしているわりに、おすずは宗十郎を一途に想っているようだが。
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