いなくてもいい私が、いたあなた
『たっらいま~~』
『あなた!! 今までどこに居たの!!!』
お父さんだ。
夜の12時。
9時にベッドの中に入ったけれど、寝れなかった私は側に置いてある時計をずっと見つめていた。
ただ、ただ、
お父さんに会いたくて。
私はベッドから出ると、部屋のドアノブを掴む。
飛び出したかった…。
『やだ…酒臭い。
あなた飲んで来たの?』
『ああ! 高ごう? のゆぅーじーんにぃーあってぇよー』
『どうして飲みに行くのよ!!!
あずさを学童に迎えに行かないといけなかったでしょ?』
『あ~~~。
忘れちゃっいましぃた~』
『忘れたって…あなた!!』
『おまえが~むかえにぃ~行ったぁ~んだぁ~ろ?
別にぃ~い~い~じゃ~ん』
『良くないでしょ!!!』
『あれぇ~? わ~すれたのかぁ~?
お前も~むかしぃ~あずさを~スーパーのぉ~トイレ~にぃ~わすれぇ~ただろぉ~』
『それは…』
『ひとのことぉ~言える~んですかぁ~』
忘れたんだ…。
私を…。
お父さんも…。
『『あずさ』』
お母さんも…。
『『あずさ』』
『ぅっ……ぅぅっ……』
私は小さく泣いた。
思いっきり大きな声を上げて泣きたかったのに。
声が…出ないんだ。
だからすごく…苦しかった。
苦しいに決まってる…。
だって私はその日。
両親にとって居なくてもいい存在なんだと
気づかされてしまったから。