いなくてもいい私が、いたあなた

『たっらいま~~』

『あなた!! 今までどこに居たの!!!』

お父さんだ。

夜の12時。

9時にベッドの中に入ったけれど、寝れなかった私は側に置いてある時計をずっと見つめていた。

ただ、ただ、

お父さんに会いたくて。

私はベッドから出ると、部屋のドアノブを掴む。

飛び出したかった…。

『やだ…酒臭い。
あなた飲んで来たの?』

『ああ! 高ごう? のゆぅーじーんにぃーあってぇよー』

『どうして飲みに行くのよ!!!
あずさを学童に迎えに行かないといけなかったでしょ?』

『あ~~~。


忘れちゃっいましぃた~』

『忘れたって…あなた!!』

『おまえが~むかえにぃ~行ったぁ~んだぁ~ろ?

別にぃ~い~い~じゃ~ん』

『良くないでしょ!!!』

『あれぇ~? わ~すれたのかぁ~?
お前も~むかしぃ~あずさを~スーパーのぉ~トイレ~にぃ~わすれぇ~ただろぉ~』

『それは…』

『ひとのことぉ~言える~んですかぁ~』


忘れたんだ…。

私を…。


お父さんも…。

『『あずさ』』

お母さんも…。

『『あずさ』』




『ぅっ……ぅぅっ……』

私は小さく泣いた。

思いっきり大きな声を上げて泣きたかったのに。

声が…出ないんだ。


だからすごく…苦しかった。

苦しいに決まってる…。


だって私はその日。

両親にとって居なくてもいい存在なんだと


気づかされてしまったから。
< 5 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop