ピュア・ラブ2 ~それからの~
眠っている間も、呼吸をしてないんじゃないかと、気が気ではなく、何度夜中におきたことか。神経質になりすぎて、妊婦のときは体重増加で注意をされたのに、急激に痩せて、橘君を心配させてしまった。
娘の名前は橘君が既に決めていて、「菖」と名付け、橘家の長女となった。

「名前の意味は?」
「茜は、あかね空がきれいだったから、茜なんだ」
「え?」

娘の名前の由来を聞いたつもりだったが、自分の名前の由来を聞かされる。
私は、一度も名づけの意味を聞いたことがなかった。

「茜のお母さんに聞いたんだ」
「……」

意味を持っていたなどとは知らなかった。
でも、いつどこでそんな話をしたのだろう。気になったが、橘君がそれ以上言わないので、私もあえて聞かなかった。

「あかね色から、娘にあやめ色。だから菖。受け継ぐんだよ、茜から菖に」
「いい名前ね」

保育器に入れられ、すやすやと眠る娘を見て、何があっても幸せにすると誓う。
それからすぐに子供に恵まれ、次女を「杏」と橘君が名付けた。
もちろん意味は、「あんず色」からだ。
お食い初めや、お宮参り、子供の歳時を大切に思っている私に、橘君は文句も言わず、協力してくれた。
初孫可愛さに、ご両親もせっせと参加して、賑やかな毎日を送っていた。
娘二人の時は、性別を聞かなかったが、三人目はどうしても橘君に似た男の子が欲しかった私は、先生に聞いて男の子だと知っている。
産まれた時の橘君の顔を見るのが楽しみだ。
私たちの家には至る所に家族写真が飾ってある。私が得られなかったものを、惜しげもなく娘たちに与えたい。
頑張りすぎる私に、橘君が言ったことは、私たちが幸せで、愛し合っていると子供に見せることが一番なんだということだ。
だからと言って、またいつも以上にスキンシップをとる。
病院の経営も順調で、研修医を受け入れるまでになり、お昼はスタッフたちの食事を作るのが私と、お義母さんの仕事にもなっている。
病院の仕事を手伝いたいが、何せ、身重の身体に、幼い子供が二人いては、かえって足手まといだ。
食事を作ることで、スタッフがいい病院で研修が出来た、働けたと言ってもらうことが大事だ。

「散歩に行く?」
「そうね、そうしましょうか」
「子供たちは見てるからいってらっしゃいよ」
「ありがとうございます」

運動不足になりがちな私に、橘君が散歩にさそう。
家の周りの川沿いを歩くだけだが、結構いい運動になるのだ。
また一枚家族写真が増える。
名前はもう決まっている。
「星斗」と付けると。橘君の名前の下にこの名前を書くと、上下で「光星」になる。
橘君の優しさと誠実さを受け継ぐ男の子に育ってほしい。そう思った。
橘君の泣き顔が想像できる。
私に与えてくれた幸せを、どれだけのことをすれば返せるのか分からない。

「茜、大丈夫?」

外で空を見上げていた私に、橘君が心配そうに声をかける。
出産はまだ先だ。

「大丈夫よ」
「モモにはご飯を上げてきたよ」
「あ、忘れちゃった。モモごめんね。ありがとう」

モモは年を取ったが、かわらず健康で元気だ。
子供は嫌いらしく、菖と杏には近寄ってはこない。
お腹が大きい私に気遣ってか、大好きな膝にも乗ってこなかった。
モモが出会わせてくれた橘君。モモは我が家の招き猫として、毎年コスプレをされ、病院のカレンダーや年賀状のモデルとなっている。
今日も元気でいてくれて、うれしい。
空は私の名前と一緒のあかね色に染まっている。

「あかね色の空だよ。きれいだ」
「そうね」

同じようなことを彼も感じたのだろうか。
三人目の子供が生まれたら、母親に写真でも送ってみようかと想いながら、わが子がいるお腹に手をあてた。



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