キミノテノヒラノウエ。
そして、
なんで私の家庭教師までついでにしていたのか
と言うと、

まあ、高校に入って、
陸上部に熱心に力を注いでいた私は
学業はてんで出来なかった。
母に隠しておいたテストが見つかって、
お小言を言われている時に、薫ちゃんがやって来て、答案用紙をつまみ上げ、
「高校は卒業しないつもりか?」と私の顔をみて、呆れた顔をした。

母の怒りが増したところに、
「俺がまとめて面倒みますよ。
ここに少し早く来ればいいだけですから。
授業の補習をさせるだけなら、
授業料はてまりちゃんの作るお菓子でいいですよ。」
とくすんと笑って提案した。

それまでは友達と遊ぶ空いた時間にお菓子を作ったりするだけだったけど
授業料だと言われると、そうもいかず、
母も材料や器材を用意してくれた。

何しろ、薫ちゃんの授業料と言ったら、
お姉ちゃんの授業料だけでウン万円だったからね。
ケーキの材料費くらいなんて事はない。

そして、薫ちゃんと私の変わった関係が始まったのだ。

勉強とお菓子の交換。

私は毎週1度自分の作ったお菓子を一緒に食べながら、
苦手な数学や、化学や物理を教わった。
テスト前は英語なんかも…。
まあ、公立高校の授業内容なんて、
薫ちゃんにとっては大した事ないんだろうけどね。



もちろん、お菓子は最初からは上手く出来なかったけど、

「不味い。早く上手くなれ。」
と言いながら、薫ちゃんはそれでも残さず食べてくれた。


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