キミノテノヒラノウエ。
「ちびすけー、遅刻するぞ。」

という薫ちゃんの声で目が醒める。

私はまた、薫ちゃんにベッドに運ばれて来たみたいだ。

恥ずかしい。

私は飛び起き、タオルを持って、洗面所に入り、

顔を洗いながら、ハッと気づく。

…勝負下着、ベッドの上に置きっぱなしだった。

でも、なかった気がする。


慌てて部屋に戻ってベッドの下を探していると、

「これを探してるの?」と薫ちゃんの不機嫌な声。
薫ちゃんが下着屋の紙袋を持ってドアから覗き込んでいる。

…見られた。
ヒモパン。

私が声を出せないでいると、

「こんな派手なモノを着けて仕事に行かれちゃ困る。しばらく没収。」
と紙袋を持って、キッチンに戻っていく。

そンな派手なの、仕事につけて行かないって!と顔が真っ赤になる。

「き、昨日サヤカと買ってたの。つ、着けてないよ。」と言うと、

「タグ付いたままだったからね。使ってないのはわかったよ。」とさらに不機嫌な声を出す。

「…」これから薫ちゃんの誘惑に使うつもりではいたんですが…



「女の子同士で、下着を買うのって楽しいのかもしれないけど…
これはやめておけ。」
と紙袋を持ってスタスタと自分の部屋に入っていく。

「部屋に持って行って、ど、どおするの?」

「俺がつけるわけないだろ。しばらくしまっておく。」と薫ちゃんは振り向かずに返事をした。


…ああ、身につける前に没収されてしまった。

薫ちゃんの誘惑作戦は、最初からつまづいている。








< 73 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop