イケメンなんか大嫌い

「わたしナベくんとは高校まで一緒だったよ。高校入ったら急に大人びてモテ出してさー」
「“泣き虫ナベ”がぁ?? まじかよ」

地下鉄の中では、つい懐かしさから昔話に花が咲き、俊弥の無礼への怒りなど忘れてしまいそうな程だった。
しかし、眠い……あくびが止まらず、俊弥の返事を耳に入れながらも、うとうとして来ていた。


「…………い。おい!」

耳元で響く大声と、頬の痛みで目が覚めた。
……あれ? 何処だったっけ、ここ。

「いった! 痛いっ!」

俊弥に頬をつねられている。
とても大人の男の対応とは思えない。

「着いたし」
「はっ!!」

覚醒したわたしは、扉へと促す人に続いて急いで車両から飛び降りた。
……今……俊弥にもたれかかってた? わたし。不覚!!
心臓が、やや速く鼓動を打っており、つねられた頬に掌を充てた。

すると俊弥が、ふてぶてしい表情で放った言葉に耳を疑う。

「……お前、未だにあんな脚開いて寝てんのかよ」
「あ゛っ……!? 何て言い方すんのよ!?」

恥ずかしさと怒りで、赤く染まった自分の顔を感じ取る。
思わず頬に充てていた手で拳を作る。

「昔から寝相悪かったよな。外面だけ良くしたって、中身昔のまんま変わってねー。よく彼氏騙してんね」

俊弥の言葉に、振り上げた拳をゆっくり下ろしながら、ぐっと手の力を強めた。

「……あんたに言われたくないし。裏表作ってんのは一緒でしょ?」
「俺は裏表なんか。TPOに合わせてるだけ」

睨みつけると、ふてぶてしい顔が怒ったような鋭い眼差しに変わった。整った顔が睨むと、正直怖い。
屁理屈を……やっぱりこの男、性格悪い……!!

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