イケメンなんか大嫌い

「……愛唯ちゃん、海外で仕事してるんだよ、今」

俊弥はしばし真顔でわたしを見上げた後、答えた。

「…………知ってる」

わたしはその返答に驚いたと同時に、胸の高鳴りを覚えた。

「……知ってたんだ。何だ、愛唯ちゃんに未練があって戻って来たんだ、ざまぁみろって思ったのに」
「……愛唯とは、とっくの昔に終わってるから。中2の時」

瞼を伏せて前に向き直るので、からかってやろうと駆け寄った。

「あぁ、そのくらいの時期だったね。男子が、愛唯ちゃんが他校の彼氏と別れたって騒いでた。あっ! 引っ越すからフラれたってこと!?」
「……さぁな」

「図星だ!」

弱みを握ったとばかりに顔を輝かせたわたしを、俊弥は無言で一瞥してスタスタと歩いて行った。
……無視すんなよ、と心の中で突っ込みながらも、胸が早鐘を打っていることを感じていた。

心臓の鼓動の意味がわからないまま、深く考えないことに気を配った。
どうして愛唯ちゃんの近況を知ってるんだろう、と胸を掠めた思いも。

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