イケメンなんか大嫌い
しかし特に服装に関するコメントはお互いにしないままに、地下鉄の座席に並んで座る。
暗い窓に映る自分達の姿が目に入り、そういえば一緒に電車に乗るのは再会した日以来だと気付いた。
あの時は、恋愛関係になるなんて思ってもみなかった。
まだ1ヶ月半くらいしか経っていないと思い返しながら、不思議な気分に包まれる。
横顔を少しばかり盗み見てから視線を落とし、おろしたてのブーツの爪先を眺めた。
行きたい場所などの希望を出すのは、舞い上がっているようで言えなかった。
舞い上がっているのは事実なんだけれど、何かが邪魔をして素直に伝えられない。
何処へ向かうのだろうという疑問は、何となく聞かないまま電車に揺られ十数分。
立ち上がったかと思うと振り返り、手を差し出される。
その手を取ると言葉もないままに、開いた扉からホームへと降り立った。
エスカレーターを登りながら、外へ出るのかと思案していると乗り換えるらしく、再度ホームへと下った。
会話はなく、表情も崩さず、だけど繋いだ手の温度と前を行く背中に何故か安心感が広がった。