イケメンなんか大嫌い
慣れ親しんだ玄関を潜ると、呼び付けた人が顔を出した。
「悪いわね。ひとりじゃベッドとか移動出来なくって」
「……別に良いよ。暇してたし」
「来て早々だけど、そっち持って」
「はーい……」
亡くなった後少し整理したものの、乱雑に散らかったままだったお父さんの部屋の中を、折り畳み式のベッドを持ち上げて移動する。
「どうするの、これ」
「これは私が使おうと思って。こっちのベッドの方が新しいから。この棚は処分したいんだけど」
「何で突然、部屋の整理を……」
「年末の間に片付けたくなったのよ」
ベッドの搬出を終えた頃には、身体を動かしただけあって塞ぎ込んでいた心が幾分か明るくなったように思えた。
少し上向いた気分が持続しているうちに、棚の撤去に掛かろうと手前の缶や箱を退かすと、懐かしい革張りの重そうな綴りが現れた。
床に屈んだ格好を崩すことなく興味本位で捲ってみると、幼い日のわたしが姿を見せる。
「わっ! いつだ、これ」
「あら、懐かしい。こうして見ると、面影あるわよねぇ~」
お母さんが立ったまま背中を曲げて背後から覗き込み、わたしの顔と写真を交互に見遣ると楽しそうに表情を綻ばせた。
「運動会かな……? 幼稚園だよね」
「お父さんも若いわねぇ~」
ページを繰ると、現れた人にどきりと心臓が鳴る。