イケメンなんか大嫌い

「そもそもあの飲み会は市川くんが言い出して、前園さんに頼んでセッティングして貰ったんだよ。あ、これ口止めされてたんだった。秘密ね」
「……えっ!?」

おどけたような調子で驚くべき言葉が飛び出して、思わず奇声を発してしまった。

「よく一緒に飲んでたんだけど、その時に提案されてさ。面白そうだから乗っちゃった。主張するの珍しいから、何かあるのかなとは思ってたけどねー」

楽しそうな笑い声を漏らし、お茶を啜った。


「また飲みに行きましょうね」
手を挙げて去って行った西田さんに、前園係長と頭を下げると、少し上向いた気持ちを携えビルを後にした。


しかし時間が経って来ると、昼間の出来事の残像がちらついて、憂鬱な気分が頭をもたげてくる。

終業後、電車に揺られながら釣り革を掴み、突っ立っていた。

目が合っても逸らされたし、綺麗な女の人とランチに行くみたいだった。
敬語を使っていたから、先輩だろうか。ふたりきりで……?
あの人ではなかったとしても、もしかしたら既に他の女の子が居るかもしれない。

折角西田さんが背中を押してくれたけれど……俊弥にとっては最早過去かもしれない。

もう手遅れだろうかと、スマートフォンの画面に浮かぶカレンダーを眺めた。
クリスマスイブは、4日後に差し迫っている。

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