イケメンなんか大嫌い
3人で定食を並べながら、谷底に突き落とされたような気分で視線を落とした。
しかしお客様の前で失礼な態度を取る訳には行かない。
「美味しいですね。うちの社食とは違って、羨ましいです~」
無理矢理に気を引き締めて、作った笑顔で相槌を返していると、早々に食べ終えた前園係長が御手洗に立った。
ふたり取り残され、そわそわしながら会話を探していると、西田さんが困ったように笑った。
「市川くんが急に担当から外れてしまって申し訳ない。異動と言う程でもないんだけどね、課内でグループが変わっただけで。前から繁忙期前のこの時期にって話があったんだよ」
「……えっ、あ……そうですね……市川さんはお仕事が早いので、残念でしたけど……」
急に俊弥の話題を振られて、ぎこちない返答になってしまった。
「僕としても市川くんを失った痛手は大きかったんだけど。まぁ、香坂さんは個人的に仲良くして貰ってるみたいだし」
もしかして先程のやり取りを見られていたのだろうかと感付き、気まずく目線を泳がせる。
「……でもわたし、嫌われたみたいなんで……」
「……あぁ、この間の電話? 市川くんがあんなこと言うなんてびっくりしたけど、相当参ってたんじゃないの? 間に受けちゃ駄目だよ」
ヒレカツを食べ終えた西田さんが箸を置き、にっこりと笑った。
何もかもお見通しのような大人の口添えに、いざなわれたくなり、じっと目を合わせる。