イケメンなんか大嫌い

そのまま一駅程歩いたところで、灯りを放った建物のエントランスが徐々に近付いて来たかと思うと、頭上に高層ビルが浮かび上がる。
黙ったまま入口を通り抜け、エレベーターの中へと連れられた。

此処に何があるんだろうと、どぎまぎしながら乗り込んだ箱の上昇と共に、高揚感が増して行く。
あっという間に高層階へと到達し、扉が開くと目の前に高級そうなレストランが現れた。

えっ……まさか……。

わたしの戸惑いをよそに躊躇いなく店内へ足を踏み入れると、迎えた店員に告げた。

「予約していた市川です」
「市川様、お待ちしておりました。ご案内致します」

呆気に取られている間に先を行く人の後に、慌てて続いた。

……わたし、こんな服装で大丈夫だったのかな!?
今さら身なりを眺め回したが当然ながらどうしようもなく、尻込みしつつも席に着く。

案内されたテーブルは大きな窓の側で、煌びやかな街の夜景が眼下に広がる。
ちらちらと落ち着き無く周囲を観察した後、僅かに身を乗り出して声を潜め問い掛けた。

「……ねぇ、こんなお店……いつの間に予約したの?」
「……だから……喧嘩した日より前……土曜だし良いかなって」

首の後ろに触れながらそっぽを向き、眉間を寄せ照れくさそうにつぶやいた。

「……あ~~……」

そのまま俯いて頭を掻いている、その反応が衝撃的で、手の甲で口元を隠してしまう。

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