イケメンなんか大嫌い
お煎餅を咀嚼しながら、前方の壁のカレンダーを眺めた。
「……お父さんの一周忌だけどさ。お供え何が良い?」
「そうねぇ~私はラスクにしようと思ってて。叔父さんのところはラングドシャか何かしてくれるって言ってたから……お煎餅とか、おかきが良いんじゃない?」
「ラスク……随分お洒落なお菓子を……それでわたしがおかき?良いけど」
「今回もお供えだけで良いわよ」
もう1年なんて、早いなぁと思う。
闘病を続けていたが、呆気なく居なくなってしまった。
「お母さんずっと此処にひとりで住むの?」
「お父さんが遺してくれた家だからねぇ~。もっと便利な場所に住みたい気もするけど」
「お兄も遠いし……」
「あんたに頼ろうとか思ってないから、自由にしなさいよ」
早く結婚した方が、安心かな。そんな予定ないけど。
テレビ台の上の小さな遺影を、何となしに視界に入れながら思い耽っていると、珍しい人の話題が出た。
「あぁそういえば、久しぶりに愛唯ちゃんのお母さんに会ったのよ、ばったり」
紡ぎ出された名前に、ドキッと心臓が跳ねた。
「今月帰国するらしいわよ。一緒に住んでる子と旅行するんだって」
「一緒に住んでる子? ……友達?」
「……友達ってニュアンスでもなかった気がするけど」