イケメンなんか大嫌い
わたしに気付いた男と目が合ってしまった。
嘘、何で来んの?
口も聞きたくなくて、目を逸らし素通りしようと歩き始めると腕を掴まれる。
「……何」
「このまま戻られても皆、気遣うだろ」
「……」
それは確かにそうだけれど。
だからと言って、あんたと関わってこれ以上傷付きたくないんだけど。
もやもやと心の中で巡らせていると、掴まれた腕の力が微かに強まったように感じた。
「俺のせいなの?」
「……何が」
「俺のせいで取り乱してんの?」
「……そんなこと……」
視線を落とすと、目の前に暗く影が落ちた。
思わず目線を上へ流すと、顔を覗き込む大きな瞳と目が合ってしまった。
こいつは、皆にけしかけられて来たのか、自分の意志で来たのか。
あんなことを言い捨てた後なのに何食わぬ澄まし顔で、考えていることが読めない。
「じゃあなんで」
俊弥が距離を詰めて来るので、反射的に後退る。
誰も居ない廊下にヒールの踵の音が響いた。
「いつも赤くなんの?」
「……」
咄嗟に反論する言葉が出て来なかった。
俊弥の息が掛かりそうな程距離が近く、顔が熱を持ったことは、自覚している。
「勘違いするって」
「……えっ?」
誰が?
「躱せよ。他の男にしてるみたいに」
眉根を寄せ細めた目が、どこか切なげに映った。
返す言葉が見つからず、わたしは表情に戸惑いを隠し切れていないだろう。
やや遠くから、宴会の盛り上がる声が耳に届いた。