イケメンなんか大嫌い
それどころではなかったのだ。
化粧室の手洗場の蛇口から勢い良く流れ出た水が、排水口に吸い込まれて行く様を見ていた。
濡れた手を頬に充てがい、瞼を閉じ深呼吸をする。
数回繰り返すと、どっと疲労感が襲って来て、最後の息を吐き出すと同時にへなへなとその場にしゃがみ込む。
膝を抱え込み顔を伏せた。
いつもそうだ。
あいつと関わると、ペースを乱される。
あんな暴言吐かれて、ロクなことがない。
「~~~~」
眉間を寄せたまま瞼を開くと、腕の隙間からゴミ箱が目に入った。
蹴飛ばしてやりたい衝動に駆られたが、腕をぐっと掴んで自分を押し留める。
髪の毛をぐしゃっと掻き乱した。
ぼんやりと床を見つめたまま、しばらく動けなかった。
頭の中がぐちゃぐちゃで上手く整理出来ず、今の状況も自分の感情もよくわからない。
わかるのは、そろそろ戻らなければいけないということだけ。
勢いに任せて席を外してから、10分くらい経つだろうか。
腕時計に視線を落とすが、出て来た時刻がわからない。
はっきり言って戻りたくなかったけれど、俊弥はともかく皆に心配を掛けてはいけない。
気は進まなかったが、ふらふらと覚束ない足取りで廊下に向かった。
化粧室の出入口から、席の方へと顔を覗かせると、廊下の壁にもたれ掛かっている人が居た。