熱砂の国から永遠の愛を ~OL、砂漠の国のプリンスに熱愛される~
気持ちを落ち着かせようと思った。

お湯を沸かし、ティーポットに紅茶の茶葉を入れてカップと一緒にムスタファの前に置く。

カップを置くときに手が震えた。

いきなり、用件を言い出すんじゃないかと思って怯えていたのだ。


『久しぶりね』私は英語で答える。
平静を装ったけれど、緊張しているのが分かったのだろうか?

『ああ』
短く返事をしただけで、ムスタファは、何も言わなかった。

彼は、無表情でカップに紅茶を注いだ。



『どうやってこの部屋に入ったの?』
少しおどけて聞いた。
本当は大問題なのに。


『どうやっても何も。ほら』
彼は、ポケットから鍵を見せてくれた。

『ここの部屋の鍵?どうして持ってるのよ』

静かに紅茶を飲みながら言う。

『この鍵で入れたぞ。どうやったも何もないだろう?』

『ファイサルったら、鍵を変えてなかったのね』


ムスタファがテーカップを置いて、鋭い目つきで私を見た。

彼は、革のジャケットをソファの上に置き、
無地の黒いTシャツと黒いズボンをはいている。

元から体を鍛えてるとは思ったけれど、
Tシャツから見えている腕を見ただけでも、

スポーツをやって鍛えているのか、
軍隊にいるのかどちらだろうと思ってしまう。


『ファイサルが戻ってくるのはもう少し先よ。食事していくでしょう?』

『俺のことは、気にしなくていい』
そういったきり黙ってしまった。

『ええ、ついでだから。ファイサルのために用意したものでよければ食べて行かない?』

『相変わらず、いい性格してるな』

ムスタファは私のことを良く思っていない。

『それはどうも』


6年前はファイサルを惑わせ、
国に帰るのを遅らせたから。

遅れなければ、ファイサルも
ケガなんかしなくて済んだと思ってるんだろう。

今に至っては、
祖国からファイサルを奪って行った最悪の女だった。

彼は、私に鋭い視線を送っている。


私も、彼の顔を見つめ返す。

『なんだよ』

伸ばし放題だった髪はきれいに整えられ、
顔つきも前よりきりっとしている。

相当、体を鍛えてるんだろうなっていうのは
見た目でもわかる。

聞きたいことは、山ほどある。

でも、それを聞き出す勇気がない。

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