レンタル彼氏–恋策–

 言い淀(よど)む私を見て、カイトさんは「ああ!」と、何かに気付いた。

「指名したくてもできないですよね。彼、近頃店に休日願いを出していますから」

「そうなんですか!?」

 知らなかった。他の女性とデートしていないと知り喜んでしまう反面、心晴が予約してくれた大学祭のデートのことを思い出し、カイトさんの情報に引っかかる。

「でも、休んでいても予約は入るんじゃないですか?彼、人気ありそうですし……」

「そうですね、たしかに彼はランクの高いスタッフで、今も、限定的に予約を受け付けてはいます。でも、ここ1ヶ月は、それまでのやる気がウソのようにパッタリ出勤率が減りました。10月くらいからですかね…そう!ちょうど、ひなたさんが凜翔を指名して下さった頃からですね、彼が変わったのは……」

 含みのあるカイトさんの物言いに気付かないフリをした。凜翔に関する新しい情報を得て、喜んでしまう。期待なんてしたらいけないのに、都合のいい風に考えそうになり胸が弾む。

 どうしようもないな、私は……。やっぱり、何をしても凜翔を好きなのをやめられないんだ。

 カイトさんが何か言いかけていた時、背後から急に右手をつかまれ、私は小さい悲鳴をあげてしまった。

「バイトサボって何してんの?」

「昭……!」

「悪いけど、コイツと話しあるから」

 こっちの反応など無視でカイトさんにそう告げると、昭はそのまま強引に私を連れていく。カイトさんに頭を下げ、昭に誘導されるがまま私は裏路地に来た。
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