レンタル彼氏–恋策–
そこで、一度冷静に考えてみることにした。
凜翔はレンタル彼氏だ。プロフィールも細工して女性客に夢を売るための架空の存在。実在するけど二次元アニメのようなもの。よって、私の気持ちは錯覚で、一時の気の迷いなんだ!
それを確実にするため、凜翔の働く店でレンタル彼氏を予約し、バイトを休んでその人と会うことにした(凜翔の店で予約をしたのは、一度利用したことのある店の方が安心できるからだ。決して彼を意識したからじゃない!決して…!)。
きっと、ときめかせてくれるはず。凜翔と同じように楽しい時間を過ごせるはず。デートする相手が変わっても、レンタル彼氏は皆同じなんだから。
ーーそう思ってデートに臨んだのに、期待は大きく外れた。この人ーーカイトさんは4つ年上でかっこよく気遣い上手な人なのに、どれだけ言葉を交わしても全く心が弾まなかった。
「退屈させちゃってますよね?」
「いえ、そんなことは!」
柔らかい口調でカイトさんに訊かれ否定したけど、その通り、全然楽しくないから困る。だけど、冷たくするのも失礼なので楽しむフリをしていたのだけど、さすがプロというべきか、カイトさんは私の本音を見破った。
「……こんなことを言って気分を悪くさせたらごめんなさい。ひなたさんは初回のデートで凜翔をご指名でしたよね。どうして今回は私を指名して下さったのですか?」
「それは、えっと……」
凜翔を忘れるために適当に選んだ……とは、言えなかった。