愛され系男子のあざとい誘惑
「優美ちゃん、返事は?」


「いや、さすがにいきなり結婚は無理ですよ。確かに私、一夜限りは嫌だと言いましたけどでもそんな急に結婚なんて」


形成逆転。無言で距離を詰めてくる社長から逃げるように私は後ずさりする。主導権を握ったのは一瞬だけだった。壁にぶつかるまでに何か考えなきゃいけない。


「優美ちゃん、結婚したくないの?今更それはないよね?だって俺、もう頭の中優美ちゃんと結婚することしかないんだよ。ここまで思わせておいて逃げるなんてずるいよね?」


「ちょ、ちょっと待ってください。話を聞いてください。逃げたりはしてないですよ。結婚は早いって言ってるだけで」


「・・・優美ちゃんより俺の方が好きの気持ちが大きいってことか」


「それはないです!絶対に私の方が好きです。だって会いに行くくらいですよ。気持ちの問題じゃなくて私たちまだお付き合いもしていないし、お互いのことを知らなさすぎじゃないですか。だからお付き合いをしてゆっくりお互いのことを知ってからにしましょうっていうことですよ」


「・・・1ヶ月。それ以上は待たない。その代わり、その1ヶ月はここで一緒に暮らすこと。お互いのことを知るためにね。家に帰すつもりなんて最初からないから」


もう逃げ場も言葉もない。私の背中はトンと壁にぶつかり、目の前には私を囲うように両手を壁についた社長。そしてまたニコニコと笑った社長はこう耳元で囁いた。



「・・・俺を落として本気にさせたんだから、もう覚悟を決めてね」
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