いつも、雨
「恥を知りなさい。」

そう言うだけ言って、母はボロボロと涙をこぼし……しゃがみ込んで嗚咽し、子供のように泣きじゃくった。


「お母さま……。」

領子も、恭風も、母にどう声をかければいいかわからない。

父が亡くなった時も、母はこんな風に泣くことはなかった。



わたくしは……そんなに、いけないことをしてしまったのかしら……。



「お母さん。……とにかく、落ち着いてください。……感情的にならずに、これからの話をいたしましょう。」

恭風はそう言って、母の背中に手を宛てがった。


母は恭風に抱きつくようにしがみつき、ぐずぐずとハンカチをもみ絞った。

「……そうね。そうですね。一日も早くお腹の子を始末しなければ。極秘で。どなたにも気づかれないうちに。」

「始末……。」

領子は、あまりのことに、呆然と母の言葉を繰り返した。


始末……。

それって、中絶しろってこと?

……ひどい。

なんて、ひどい……。


「わたくし……今じゃなくて、いつか……竹原の子供を妊娠すれば……お父さまも、お母さまも……仕方なくでも、竹原との仲を認めてくださると思っていました……。どうしても、ダメなのですか?」

涙ながらに、領子はそう訴えた。


カッとした母は、再び領子に手を振り上げた。


さっきより至近距離だったので、今度は、パーン!と、イイ音が響き渡った。

ぶった母も、ぶたれた領子も、音と衝撃に驚いた。



頬が……ジンジンする……。

さすがに、痛かったわ。


領子は頬を抑えて、うずくまり泣いた。

泣いても泣いても涙は止まらなかった。



「奥さま!?誤解です!領子さまは!お嬢さまは、みごもられてなんて、いらっしゃいません!」

パタパタとねえやが走って来て、領子に覆い被さるように抱きしめた。


「ねえや。かばい立ては無用です。……あなたも、気づいていたのでしょう? ……だから、わたくしは反対したのです。あんな、危険きわまりない男を、家に入れるなんて……。」

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