いつも、雨
つくづく、舅の寛大さが羨ましくなる。
生まれも育ちも、明らかに釣り合っていないのに……娘ともども彼の音楽の才能に心酔している。
……確かに上手いし、頭も顔もいいし、人当たりは、さらにいい。
でも領子は、雅人の調子の良さに馴染めなかった。
奏でる音楽がどんなにも素晴らしくとも……その表現が自由過ぎて、領子の理解を超越していた。
……うらやましくもあり……心配……。
かほりさま、このまま、あの子と……ご結婚されるのかしら。
要人と結婚させてもらえなかった我が身と照らし合わせると、複雑な気持ちになる。
かほりが幸せなら、それでいいとは思うけど……。
領子はふるふると首を横に振った。
よしましょう。
結婚が幸せなゴールじゃない。
そんなの、今、わかりすぎるほどよくわかっているのだから。
ご縁があれば、どんな形でも、また巡り会い、結ばれるものなのだろう。
ねえ、竹原。
わたくしたちのゴールは、どこなのかしら。
翌朝、橘家の調理師が頑張ってくれた。
六甲の水のペットボトルを購入し、昆布と鰹節でだしを取り、薄口醤油と酒と塩で味付けしたお吸物を恭匡にだしてくれた。
何とか恭匡の口に合ったらしく、ようやく残さず平らげてくれた。
領子はホッとして、食卓で思わず涙ぐんだ。
舅と姑は、そんな嫁を見て……そろそろ孫を望んでもよい時期かもしれない……と、思い始めていた。
まだ若い嫁を気遣って、これまで急かすようなことは一言も言わなかったが……息子が帰ってきたらせっついてみてもいいかもしれない。
嫁は、情の深い、いい母親になりそうだ。
そんな舅達の思惑には気づかなかったけど、領子自身、恭匡に対する母性にも似た愛情を自覚していた。
恭匡にも領子の愛情は伝わっていた。
東京の天花寺家に到着しても、恭匡は領子から離れようとしなかった。
懐かれると、ますますかわいい。
「この部屋を、恭匡さんのお部屋にいたしましょうね。昔、おばあさま……恭匡さんにとってひいおばあさまが使ってらしたわ。……陽当たりもいいし、お庭も見渡せるのよ。」
祖母のあと、要人が使っていたことは言わなかった。
領子にとっても思い出深い部屋だ。
生まれも育ちも、明らかに釣り合っていないのに……娘ともども彼の音楽の才能に心酔している。
……確かに上手いし、頭も顔もいいし、人当たりは、さらにいい。
でも領子は、雅人の調子の良さに馴染めなかった。
奏でる音楽がどんなにも素晴らしくとも……その表現が自由過ぎて、領子の理解を超越していた。
……うらやましくもあり……心配……。
かほりさま、このまま、あの子と……ご結婚されるのかしら。
要人と結婚させてもらえなかった我が身と照らし合わせると、複雑な気持ちになる。
かほりが幸せなら、それでいいとは思うけど……。
領子はふるふると首を横に振った。
よしましょう。
結婚が幸せなゴールじゃない。
そんなの、今、わかりすぎるほどよくわかっているのだから。
ご縁があれば、どんな形でも、また巡り会い、結ばれるものなのだろう。
ねえ、竹原。
わたくしたちのゴールは、どこなのかしら。
翌朝、橘家の調理師が頑張ってくれた。
六甲の水のペットボトルを購入し、昆布と鰹節でだしを取り、薄口醤油と酒と塩で味付けしたお吸物を恭匡にだしてくれた。
何とか恭匡の口に合ったらしく、ようやく残さず平らげてくれた。
領子はホッとして、食卓で思わず涙ぐんだ。
舅と姑は、そんな嫁を見て……そろそろ孫を望んでもよい時期かもしれない……と、思い始めていた。
まだ若い嫁を気遣って、これまで急かすようなことは一言も言わなかったが……息子が帰ってきたらせっついてみてもいいかもしれない。
嫁は、情の深い、いい母親になりそうだ。
そんな舅達の思惑には気づかなかったけど、領子自身、恭匡に対する母性にも似た愛情を自覚していた。
恭匡にも領子の愛情は伝わっていた。
東京の天花寺家に到着しても、恭匡は領子から離れようとしなかった。
懐かれると、ますますかわいい。
「この部屋を、恭匡さんのお部屋にいたしましょうね。昔、おばあさま……恭匡さんにとってひいおばあさまが使ってらしたわ。……陽当たりもいいし、お庭も見渡せるのよ。」
祖母のあと、要人が使っていたことは言わなかった。
領子にとっても思い出深い部屋だ。