いつも、雨
領子のほうは、夫が留守ということもあり、まだふわふわとしていた。

想い出すと、身体の奥が甘く疼く。


幸せの余韻は夫の帰宅まで続いた。




「参ったよ。すぐに帰れると思ったのに、結局一週間だよ。……明日出勤したらしたで、仕事が山積みなんだろうな。……勘弁してほしいよ。」

帰国した夫の千歳は、一週間で少し太ったようだ。


「お帰りなさいませ。……お留守の間に、義姉の葬儀は滞りなく終わりました。それから、兄と甥は、こちらに引っ越してきました。ご心配をおかけしました。ありがとうございました。」

領子は夫にそう報告した。


「いや。結局、顔出しできずに、すまない。」

「お仕事ですもの。お心だけで充分ですわ。ありがとうございます。」


相変わらず文句も愚痴もこぼさない、でき過ぎな嫁に、千歳は自分がいかに身動きとれなかったを一生懸命言い訳した。


領子は微笑を貼り付けて聞き流していたが……一点だけ、引っかかった。


夫が、今回の一件の責任を押し付けている会社の名前を、領子は知っていた。

いや、つい最近、知った。


……義姉の葬儀に花を出していた会社だわ。

確か、あの並びは……竹原の傘下じゃなかったかしら。

もしかして、竹原が手を回したの?

まさか……。

……。

いいえ。

竹原なら、それぐらいのこと、平気でするわね。



領子は、呆れるやら、おかしいやら……意味のわからない笑いに肩を揺らした。

ちょうど夫が土産にと、ブランドもののスカーフを見せてくれたタイミングだった。


千歳は、領子が喜んでいると単純に思ったようだ。


もちろん、わざわざ選んで買って来てくれたことは、うれしい。

たとえ趣味じゃないブランドでも、普段あまり使わないアイテムだとしても……。





その夜、領子の部屋に千歳がやってきた。

「……そろそろ、孫を作れとさ。」

何とも色気のないことを言って、さっさと領子のベッドに入った。


顔色を失い、固まる領子を、千歳はめんどくさそうに手招きした。


……拒むことはできなかった。


これまで通り、領子は人形のように心を押し殺して、夫に従った。

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