いつも、雨
そして、妹をしげしげと見つめて、言った。
「そうかあ。あんた、知ってたんかいな。……まあ、ちょっと前やったら、貴族の嗜みとも言われてたしなあ。珍しいことちゃうか。……せやけど、趣味に走るんは、せめてややこができてからにしてくれんとなあ。あんたの立場がないやんなあ……。」
……ひくりと、領子の頬が引き攣った。
貴族の嗜み……。
それは、お兄さまも嗜んでらした……男色……ってことかしら……。
まあ……質の悪い女性に引っかかるよりはマシかしら。
領子は、自分でも驚くほど冷静に受け止めていた。
「……ちょうどよかったですわ。わたくし、妊娠いたしましたの。今日はその報告で参りました。」
ニコリと、笑顔さえ浮かべて領子は兄に言った。
恭風は、怪訝そうな顔をした。
「……あんた……まさか……」
領子の笑顔がすーっと引っ込み、真顔になった。
疑われている。
お兄さまに、疑われている。
……竹原と逢っていることを……ご存じではないと思いたいけれど……。
領子は能面のような顔のまま言った。
「喜んでくださらないの?お兄さま。橘の家では泣いて喜んでくださっているのに。安定期に入ったら、群馬の温泉に旅行して、お召しの訪問着を誂えてくださるそうよ。」
抑揚のない声だった。
恭風は、領子の心中を読み取ることができず、困惑した。
妹がどの程度、竹原に未練を残しているのか……正直なところ、よくわからない。
しかし、頑ななこの妹が、竹原以外の男に心を奪われるとはとても思えない。
……まあ、強引に身体を持っていかれてしまえば、流されてしまいそうやけど……。
いや。
義理の弟となった千歳は、そんな男ではない。
むしろ、領子に拒まれたら、それっきり……。
「……ほなあ、離婚せえへんのか。」
恭風は、わざわざもう一度、念を押すように確認した。
領子は苦笑した。
「しませんよ。……追い出されない限り、わたくしからは、橘家を出ることはありません。」
「そうかあ。あんた、知ってたんかいな。……まあ、ちょっと前やったら、貴族の嗜みとも言われてたしなあ。珍しいことちゃうか。……せやけど、趣味に走るんは、せめてややこができてからにしてくれんとなあ。あんたの立場がないやんなあ……。」
……ひくりと、領子の頬が引き攣った。
貴族の嗜み……。
それは、お兄さまも嗜んでらした……男色……ってことかしら……。
まあ……質の悪い女性に引っかかるよりはマシかしら。
領子は、自分でも驚くほど冷静に受け止めていた。
「……ちょうどよかったですわ。わたくし、妊娠いたしましたの。今日はその報告で参りました。」
ニコリと、笑顔さえ浮かべて領子は兄に言った。
恭風は、怪訝そうな顔をした。
「……あんた……まさか……」
領子の笑顔がすーっと引っ込み、真顔になった。
疑われている。
お兄さまに、疑われている。
……竹原と逢っていることを……ご存じではないと思いたいけれど……。
領子は能面のような顔のまま言った。
「喜んでくださらないの?お兄さま。橘の家では泣いて喜んでくださっているのに。安定期に入ったら、群馬の温泉に旅行して、お召しの訪問着を誂えてくださるそうよ。」
抑揚のない声だった。
恭風は、領子の心中を読み取ることができず、困惑した。
妹がどの程度、竹原に未練を残しているのか……正直なところ、よくわからない。
しかし、頑ななこの妹が、竹原以外の男に心を奪われるとはとても思えない。
……まあ、強引に身体を持っていかれてしまえば、流されてしまいそうやけど……。
いや。
義理の弟となった千歳は、そんな男ではない。
むしろ、領子に拒まれたら、それっきり……。
「……ほなあ、離婚せえへんのか。」
恭風は、わざわざもう一度、念を押すように確認した。
領子は苦笑した。
「しませんよ。……追い出されない限り、わたくしからは、橘家を出ることはありません。」