いつも、雨
……本当に……馬鹿だな。

俺は、領子さまの言葉だけは、疑うことができない。

でもそれじゃ、領子さまをお守りすることはできない。


「申し訳ありませんでした。ご心配をおかけして……。」

要人は、心から謝った。


領子は涙目で要人を見上げていた。

要人は領子にそっと口づけてから、痩せた背中に手を回した。


折れてしまいそうだな……。



「……抱いてください。離さないで。お願い……。」

振り絞るように、領子が懇願した。


もちろん要人に異存はない。


いつも以上に、優しく、そーっとそーっと、壊れ物を扱うように、要人は領子と交わった。

領子はあまりにも軽くて……ゆらゆら揺らすだけで、折れてしまいそうだった。




「どうして、来たの?」

事後、ようやく領子は落ち着きを取り戻したらしい。

要人の胸に頬を宛てて、要人の頬やうなじを確かめるように指で辿りながら、そう尋ねた。


「内祝が届きましたので、お礼のお電話をかけるつもりで、こちらにお電話いたしました。」

「ふぅん。……内祝って。わたくしは、何も存じませんわ。橘の姑(はは)が手配したのでしょう。」

「……そのようですね。まさか、領子さまがこのように弱ってらっしゃるとは思いも寄りませんでした。」


てっきり新米ママとして、張り切ってらっしゃると思ったのに……。


領子は、ぷーっと頬をふくらませた。

「全部竹原のせいよ。わたくし、竹原に、出産の生々しいところは見せたくなかったのに……。しかも、それっきり姿を見せないなんて、ひどすぎない?わたくし……わたくし……今度こそ嫌われたかと思うと……もう、生きてる意味もない気がしたわ。」



かわいいことをおっしゃる……。


要人は、頬がニヤけるのを片手で抑えた。

「ないよ。一生、ない。俺が領子さまを嫌いになるなんて、絶対にあり得ない。……たとえ、何度裏切られても、あなたを嫌いになんてなれませんよ。」

「……本当?リップサービスじゃなくて?本当に、わたくしを……恨まない?」


要人は肩をすくめた。

「恨みません。一時的に腹が立ったとしても、貴女が幸せならそれでいい。……少しでも幸せじゃなさそうなら、また、こうして、駆け付けます。……何度でも。」
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