いつも、雨
頑固さと柔軟さを兼ね備えた一夫は、茶室の床柱を丹念に目測しながら領子に尋ねた。

「位置は、このへん?」


「ええ。そうですね。……変かしら?」


聞き直した領子に一夫は首を横に振った。


「いや。茶室に花釘は付き物や。えりちゃんは、お茶もお華もしはるんやろ?そりゃ、欲しいわなぁ。……せやけど、お兄さん、この南天にえらいこだわり持ってはったから……傷つけたくないんやろなあ。見事な南天やもんなあ。」

一夫は、しみじみとそう言って、床柱を撫でた。


「見事……ですか?正直なところ、わたくしは、床柱にしては細すぎて、あまり見映えがいいとも思いませんの。」


領子がそう言うと、一夫は苦笑した。


「確かに、一般的な床柱とは比較にならへんぐらい細いけど……南天は成長が遅いから、これでも、ものすごく貴重なんですわ。……これで、樹齢何年ぐらいやと思う?」


首を傾げて、領子も南天の床柱に触れた。

直径10cmあるかないかの、材木としては細い木。


「……100年超えてるんですか?」

領子としては、思い切って大きな数字を言ってみたつもりだった。


でも、一夫はニッと笑った。

「全然足りひんわ。……たぶん、これなら樹齢1000年近いんちゃうかなあ。」

「千年!?」


さすがに驚いた。


「そんなもんやと思うで。……こんな木ぃ、よぉ見つけて来はったわ。」


感心する一夫に、領子は唖然として……それからようやく思い当たったことを口にした。


「……では、もしかして、その南天は、天花寺(てんげいじ)家があの地にお屋敷を構えた頃から植わっていたものということかしら。」

「へ!?自分家(ち)の庭に生(は)えてたんかいな!……はあ~~~~。」

「はあ……。」


なるほど。

さすがにそこまで聞くと、大切にしなければいけない床柱だということが理解できた。


「わかりました。では、花釘は諦めますわ。」


「……いや……南天に傷つけへんように金具を加工したら……いけるんちゃうかな。ちょぉ待って。工夫してみるから。」


諦めようとした領子に、一夫はそう言ってくれた。

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