いつも、雨
その日、一夫が来たことを、領子は要人に言わなかった。
要人に言えば、また、当たり前のように費用の負担をしてしまうのだろう。
……それがわかりすぎるほどにわかるだけに……領子は口を閉ざした。
3日後の朝、一夫が意気揚々やって来た。
「床柱の奥の壁から可動式のフックをこう、柱の中央部まで回してくるっちゅうのはどうやろ?あんまり重たいのは無理やけど。」
そう言って見せてくれたモノは、蝶番(ちょうつがい)に太くて長いフックが取り付けてあった。
「……すごいわ。こんなものがあるんですねえ。」
一夫は頭をかいた。
「いや……ないから、作ってきてん。うちの若いもんに溶接の巧いんと、金属加工が得意なんが居たんですわ。そいつらの合作。」
「まあ……。ありがとうございます。これなら、兄も文句を言いませんわ。」
感嘆する領子に一夫は満足そうにうなずいた。
「あー、よかった。ほな、ちゃちゃっとつけるわ。」
言葉通り、一夫はあっという間に新しい器具を取り付けた。
領子はその間に庭に出た。
一足先に満開の彼岸桜を一枝切って戻ると、春慶の小ぶりな掛花入れに活けて飾ってみた。
「……へえ。いや、めっちゃいいわ。えりちゃん。春やなあ。」
道具を片付けていた一夫が感心して褒めてくれた。
「宇賀神さんのおかげですわ。ありがとう。……あら、待って。せめて、お茶でも飲んでらしてください。」
そう言って領子はキタさんを呼ぼうとした……ら……
「お茶、もらえるんやったら、えりちゃん、お茶たててーな。」
と、一夫がねだった。
驚いたけれど、領子はうれしそうにうなずいた。
「喜んで。すぐに準備しますね。」
「あ、道具とか適当でええで。これから炭、入れるとか、待てへんしな。」
遠慮なのか、どうでもいいのかよくわからなかったけれど、領子は一旦廊下に出たのに、ひょこりと引き戸から顔を出した。
……子供みたいやな……。
一夫は、逢うたびに領子にかわいらしさを感じ、愛しさを覚えた。
「お急ぎですか?」
「まあ……これから役所寄って、現場行かんとな。」
「わかりました!少しだけお待ちになって。」
タタタタ……と、軽やかな足音が遠のいて行くのを、一夫は心地よく聞いていた。
要人に言えば、また、当たり前のように費用の負担をしてしまうのだろう。
……それがわかりすぎるほどにわかるだけに……領子は口を閉ざした。
3日後の朝、一夫が意気揚々やって来た。
「床柱の奥の壁から可動式のフックをこう、柱の中央部まで回してくるっちゅうのはどうやろ?あんまり重たいのは無理やけど。」
そう言って見せてくれたモノは、蝶番(ちょうつがい)に太くて長いフックが取り付けてあった。
「……すごいわ。こんなものがあるんですねえ。」
一夫は頭をかいた。
「いや……ないから、作ってきてん。うちの若いもんに溶接の巧いんと、金属加工が得意なんが居たんですわ。そいつらの合作。」
「まあ……。ありがとうございます。これなら、兄も文句を言いませんわ。」
感嘆する領子に一夫は満足そうにうなずいた。
「あー、よかった。ほな、ちゃちゃっとつけるわ。」
言葉通り、一夫はあっという間に新しい器具を取り付けた。
領子はその間に庭に出た。
一足先に満開の彼岸桜を一枝切って戻ると、春慶の小ぶりな掛花入れに活けて飾ってみた。
「……へえ。いや、めっちゃいいわ。えりちゃん。春やなあ。」
道具を片付けていた一夫が感心して褒めてくれた。
「宇賀神さんのおかげですわ。ありがとう。……あら、待って。せめて、お茶でも飲んでらしてください。」
そう言って領子はキタさんを呼ぼうとした……ら……
「お茶、もらえるんやったら、えりちゃん、お茶たててーな。」
と、一夫がねだった。
驚いたけれど、領子はうれしそうにうなずいた。
「喜んで。すぐに準備しますね。」
「あ、道具とか適当でええで。これから炭、入れるとか、待てへんしな。」
遠慮なのか、どうでもいいのかよくわからなかったけれど、領子は一旦廊下に出たのに、ひょこりと引き戸から顔を出した。
……子供みたいやな……。
一夫は、逢うたびに領子にかわいらしさを感じ、愛しさを覚えた。
「お急ぎですか?」
「まあ……これから役所寄って、現場行かんとな。」
「わかりました!少しだけお待ちになって。」
タタタタ……と、軽やかな足音が遠のいて行くのを、一夫は心地よく聞いていた。