いつも、雨
要人は、ふっとほほ笑んだ。

「……失礼いたしました。……でも、夏子さんには、私があなたを愛していることを伝えているということに他なりません。」


「……そうかしら。」

不満そうに領子はつぶやいた。


「そうですよ。」

要人は力強く念押しした。



実際、要人は夏子に、自分の初恋の密やかな成就まで話してしまっていた。

つまり、要人の初恋の女性が、要人の本妻の佐那子が産んだ由未と同い年の娘を産んだということも知っている。


……とっくに、夏子に対するヨコシマな想いは消えている。


要人は、それを証明したくて、ムキになっていた。

「……愚息は夏子さんと結婚したいと本気で思っているようです。……最初のうちは、青臭いと呆れていましたが……今は、それもいいと思っているんですよ。義人が腹を括るなら。」


「結婚……。」

さすがに領子は絶句した。


「そういうことです。」

要人は、ようやく納得したらしい領子を抱き寄せて口づけた。





実の両親の思惑を知る由もなく……百合子と義人は、密やかに逢瀬を重ねていた。

保健室の夏子さんという本命の彼女がいながらも、義人は興味と本能の赴くままの漁色家生活をしている。


博愛主義と看板を掲げながらも……百合子はやはり特別だった。


父の要人の危惧する通り、義人は百合子を支配し、いずれは手酷く捨てて傷つけるつもりで、翻弄していた。





状況が一変したのは、梅雨が終わる頃。

百合子を心身共に掌握して、ようやく義人は気づいた。


自分が如何に馬鹿なことをしていたか。

かつての恨みなんか、水に流してしまうべきだった。


人を呪わば穴二つ、だ。



義人は、本気で自分を想ってくれる百合子のいじらしさにほだされ、同時に罪悪感に苛まれた。

そして、よりによって、その懺悔を……最愛の夏子に告白した。


要人から百合子の話を聞いていた夏子は、義人が異母妹と関係を持ってしまったことに気づいた。

目敏い義人もまた、夏子の動揺を察知すると、かまを掛けて、とうとう夏子から事の真相を聞き出してしまった。


自分が、血の繋がった妹に対して、どれだけ酷いことをしてしまったかを。

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