いつも、雨
「……ご報告があります……。」


東京から京都へ戻った義人は、自宅ではなく、要人の会社を訪ねた。

土曜日で基本的に社員は休みでも、要人はいつも通り、会社にいた。


社長室に入って来た義人は、いつになく緊張しているようだった。


神妙な息子に、まるで先週の自分を観るようだ。

要人は嗤いをかみ殺して、先を促した。

「何だ?何か問題でも起こしたんか?」

「いえ。……昨日今日と、所用で東京に行って参りました。……ついでに、由未に希和子ちゃんの話をしておこうと思ったのですが……」

「……。」

要人の眉毛がぴくりと反応した。


義人は、言葉を選んで、恭匡からの伝言を伝えた。

「由未の大学受験が終わったら、恭匡さまが、我が家に、結婚の許可をもらいに来られるそうです。」


要人は、目を閉じて、ほうっと息をついた。

「……そうか……。」


言葉が、出て来ない。


紆余曲折を経て、ようやく、天花寺家と正式に姻戚となるのか……。


……いや。

こうなることは、とっくにわかっていた。



そのつもりで、高校3年生になる微妙な時期なのに、娘を恭匡さまのもとへ送り込んだ。


この夏休み、京都にやってきた2人の様子を見て、成就を確信した。

もはや、時間の問題だろうと思えた。








しかし想定外のトラブルが重なってしまった。






就職先の会社を買収された恭匡は、要人に対して牙をむいた。

要人の思い通りにはならない……と、対峙してきた。


驚き慌てるとともに、愉悦を覚えた。

頼もしさすら感じた。


やはり恭匡さまは面白い。




秘書の原も、対策に骨を折り……恭匡を、これまで以上に、放置できなくなってしまった。

その筋のプロに依頼して、定期的に探りを入れさせ、報告書をあげさせ始めた。


最初の報告書は、約束の期日よりずいぶんと早くもたらされた。


不審に思った秘書の原は、急ぎの仕事も、社長の義人の遂行も、他の者に任せて、厳重に梱包された分厚い封筒を開封した。
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