いつも、雨
「……でも、それでは、碧生くんに申し訳ないわ……。」
そう言って、領子はまた涙をこぼした。
再び、要人が手を伸ばして、領子の背を撫でた。
「あまり領子さまを嘆かせないでください。」
要人の願いに、百合子はうつむいてしまい、泉が謝った。
「かんにん。……てか、12年前は、百合子はフリーやったで。今の旦那の碧生にネトラレたんは、俺のほうや。なあ?」
ネトラレ……。
淫靡なスラングに驚き過ぎて、領子の涙がぴたりと止まった。
「もう!泉さん、やめてよ。それではわたくしが泉さんを裏切ったみたいじゃないですか。泉さんには昔も今も、ちゃんと奥さまがいらっしゃるのに。ひどいわ。」
反論する百合子の頬が赤く色づいていた。
「それに、その後はずっと何もございませんでした。……こうして逢うようになったのは、2年前からですわ。」
「2年……。」
領子は力なく繰り返して、また涙をこぼした。
要人は、領子からハンカチを取り戻すと、そっと拭いてやった。
……12年前の復縁が2年継続しているということか。
長いというべきか、短いというべきか……。
まあ、確かに火遊びではないということだろう。
それにしても、泉はともかくとして、百合子までが不貞に開き直っているのはどうしたものか。
罪悪感がないわけでもないだろうに。
……少し……注意喚起すべきか……。
「わかりました。それでは、これからも君たちの関係が明るみにでないよう、祈っていましょう。いや、必要とあらば、骨も折りましょう。……碧生くんはともかく、恭匡さまの知るところになれば、一大事ですから。どうか、お気をつけて。」
要人は、静かにそう言った。
励ましとアドバイスのような口調だが、脅しだった。
泉には伝わらなかったが、百合子には通じたようだ。
顔色が変わり、先ほどまでとは別人のようにそわそわし始めた。
今は戸籍上の養父となった従兄の恭匡の潔癖さと、夫の碧生に対する親愛は、確実に百合子を追いつめた。
そう言って、領子はまた涙をこぼした。
再び、要人が手を伸ばして、領子の背を撫でた。
「あまり領子さまを嘆かせないでください。」
要人の願いに、百合子はうつむいてしまい、泉が謝った。
「かんにん。……てか、12年前は、百合子はフリーやったで。今の旦那の碧生にネトラレたんは、俺のほうや。なあ?」
ネトラレ……。
淫靡なスラングに驚き過ぎて、領子の涙がぴたりと止まった。
「もう!泉さん、やめてよ。それではわたくしが泉さんを裏切ったみたいじゃないですか。泉さんには昔も今も、ちゃんと奥さまがいらっしゃるのに。ひどいわ。」
反論する百合子の頬が赤く色づいていた。
「それに、その後はずっと何もございませんでした。……こうして逢うようになったのは、2年前からですわ。」
「2年……。」
領子は力なく繰り返して、また涙をこぼした。
要人は、領子からハンカチを取り戻すと、そっと拭いてやった。
……12年前の復縁が2年継続しているということか。
長いというべきか、短いというべきか……。
まあ、確かに火遊びではないということだろう。
それにしても、泉はともかくとして、百合子までが不貞に開き直っているのはどうしたものか。
罪悪感がないわけでもないだろうに。
……少し……注意喚起すべきか……。
「わかりました。それでは、これからも君たちの関係が明るみにでないよう、祈っていましょう。いや、必要とあらば、骨も折りましょう。……碧生くんはともかく、恭匡さまの知るところになれば、一大事ですから。どうか、お気をつけて。」
要人は、静かにそう言った。
励ましとアドバイスのような口調だが、脅しだった。
泉には伝わらなかったが、百合子には通じたようだ。
顔色が変わり、先ほどまでとは別人のようにそわそわし始めた。
今は戸籍上の養父となった従兄の恭匡の潔癖さと、夫の碧生に対する親愛は、確実に百合子を追いつめた。