いつも、雨
領子にも、娘の不安が理解できた。

「……そうですね。あなたも33歳。とっくに子供ではないのに……出過ぎたことを言いましたね。……わかりました。わたくしは、もう何も言いません。あなたが幸せなら、それでよろしいですわ。たとえあなたが碧生くんに離婚されても、恭匡さんに子供たちを取られた上で離縁されても、わたくしだけはあなたの味方でいましょう。わたくしが百合子を守ります。」


もちろん嫌味ではない。

領子は、母親としての愛情を奮い立たせて、そう宣言した。


結果的に、これが百合子をさらに苛んだ。


腹が据わったのか、領子はようやく普通に座って、お箸を持った。

もともと、名物の筍料理を味わいたくて、わざわざここにやってきたのだ。

朝掘りのタケノコをナマでいただき、領子は満足そうに微笑んだ。

領子の笑顔に要人も相好を崩す。



不思議そうに泉が尋ねた。

「……ほんまに、仲ええねんなあ。オトンとオカン。……せやのに、これからも、一緒にならへんの?」


「泉さん!」


百合子の非難をものともせず、泉は質問を重ねた。

「別に、今すぐ離婚して再婚とか、そーゆーんちゃうやん。……先のことはわからんやん?わからんけど、もし、百合子が突然死んだら、俺も、もう終わりやし。……後悔せんように、多少無理しても時間作りたい思てる。俺らより、自分らのほうが、いつ死んでもおかしくないやん?歳的に。不安にならん?」

歯に絹着せぬ物言いだった。



しかし自分のことより、百合子の死を仮定したことに、領子は引っかかりを覚えた。

百合子が死んだら俺も終わり?……どういう意味なの?

死ぬほど愛してるとでも仰りたいのかしら?


怪訝そうな領子に代わって、要人が答えた。

「年齢関係なく、死は誰の上にも平等。いや、むしろ、しょーりさんのほうが身体を張ってらっしゃる分、よほど身近ではないですか。……あるいは……パートナーを亡くされた近親者がいらっしゃいますかな?」


泉は何も答えなかったが、隣の百合子が気遣わしげに泉を見た。


どうやら、そういうことらしい。

言葉は乱暴だが、泉は泉なりに傷つき、苦しんだ結果が、百合子との復縁ということか。


確かに、ただの火遊びではなさそうだ。


それなら……と、要人は泉の問いに真正面から答えた。
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