いつも、雨
希和子は苦笑した。
「まさか。そんなんじゃないの。……最近はね……孝義くんのことを手伝ってくださるかたがたが増えたから……私がしゃしゃり出る必要なくなったのよ。」
「……ふぅん……。」
母の説明に、まいらは納得しなかった。
希和子は物憂げにため息をついた。
ずるいなあ……と、まいらは母を見つめた。
決して美人ではない。
顔の造作なら、まいらのほうが、もっと言えば、異母姉の桜子のほうが圧倒的に美人だ。
なのに、母のこのたおやかな風情は、やっぱりずるいと思う。
孤児だった昔はともかく、今は経済的にも、家族からの愛情にも、孝義くんたち友人にも恵まれて、十二分に幸せなはずなのに。
いつまでも自分を睨んでる娘に負けたらしく、希和子が渋々重い口を割った。
「孝義くんの後妻候補さんたちが来られてて……私がいると、誤解を招くらしいの。……そんなんじゃないのにね。」
「え!孝義くん再婚するの!?」
まいらの顔色が変わった。
「……いずれは、そうなるでしょうね。周囲がほっとかないもの。……まだ喪が明けたばかりなのに……かわいそう……。」
涙ぐむ母に、まいらは内心、舌打ちをした。
母のこの、いかにも、か弱いところが、まいらは苦手だった。
幾つになってもお姫さま気質で、無条件に「守ってあげたい」と周囲を思わせるのは、ある種の魔性だと思う。
ずるい。
まいらは、自分が人よりしっかりしてるとも、強いとも思わない。
むしろ、何の特技も取り柄もない平凡な子だと自覚している。
年相応に、父や祖父、なくなった祖母には甘えたし、学校では良くも悪くも目立たない、ふつうの子だ。
だが、母親に対してだけは、小さい頃から甘えることができず、むしろ、母親が悲しい顔をしないようにと気遣ってきた。
決して仲が悪いわけではないが、当たり前の親子関係とは歪んだまま……。
「……かわいそう、じゃねーよ。」
かすかな声でまいらがつぶやいた。
聞こえたのか聞こえなかったのか……耳に届いたとしても、自分のことで精一杯なのか……希和子はティッシュにむせび泣き、鼻を掻み……それから、しみじみと言った。
「まさか。そんなんじゃないの。……最近はね……孝義くんのことを手伝ってくださるかたがたが増えたから……私がしゃしゃり出る必要なくなったのよ。」
「……ふぅん……。」
母の説明に、まいらは納得しなかった。
希和子は物憂げにため息をついた。
ずるいなあ……と、まいらは母を見つめた。
決して美人ではない。
顔の造作なら、まいらのほうが、もっと言えば、異母姉の桜子のほうが圧倒的に美人だ。
なのに、母のこのたおやかな風情は、やっぱりずるいと思う。
孤児だった昔はともかく、今は経済的にも、家族からの愛情にも、孝義くんたち友人にも恵まれて、十二分に幸せなはずなのに。
いつまでも自分を睨んでる娘に負けたらしく、希和子が渋々重い口を割った。
「孝義くんの後妻候補さんたちが来られてて……私がいると、誤解を招くらしいの。……そんなんじゃないのにね。」
「え!孝義くん再婚するの!?」
まいらの顔色が変わった。
「……いずれは、そうなるでしょうね。周囲がほっとかないもの。……まだ喪が明けたばかりなのに……かわいそう……。」
涙ぐむ母に、まいらは内心、舌打ちをした。
母のこの、いかにも、か弱いところが、まいらは苦手だった。
幾つになってもお姫さま気質で、無条件に「守ってあげたい」と周囲を思わせるのは、ある種の魔性だと思う。
ずるい。
まいらは、自分が人よりしっかりしてるとも、強いとも思わない。
むしろ、何の特技も取り柄もない平凡な子だと自覚している。
年相応に、父や祖父、なくなった祖母には甘えたし、学校では良くも悪くも目立たない、ふつうの子だ。
だが、母親に対してだけは、小さい頃から甘えることができず、むしろ、母親が悲しい顔をしないようにと気遣ってきた。
決して仲が悪いわけではないが、当たり前の親子関係とは歪んだまま……。
「……かわいそう、じゃねーよ。」
かすかな声でまいらがつぶやいた。
聞こえたのか聞こえなかったのか……耳に届いたとしても、自分のことで精一杯なのか……希和子はティッシュにむせび泣き、鼻を掻み……それから、しみじみと言った。