いつも、雨
希和子は苦笑した。

「まさか。そんなんじゃないの。……最近はね……孝義くんのことを手伝ってくださるかたがたが増えたから……私がしゃしゃり出る必要なくなったのよ。」

「……ふぅん……。」


母の説明に、まいらは納得しなかった。


希和子は物憂げにため息をついた。



ずるいなあ……と、まいらは母を見つめた。


決して美人ではない。

顔の造作なら、まいらのほうが、もっと言えば、異母姉の桜子のほうが圧倒的に美人だ。

なのに、母のこのたおやかな風情は、やっぱりずるいと思う。


孤児だった昔はともかく、今は経済的にも、家族からの愛情にも、孝義くんたち友人にも恵まれて、十二分に幸せなはずなのに。




いつまでも自分を睨んでる娘に負けたらしく、希和子が渋々重い口を割った。

「孝義くんの後妻候補さんたちが来られてて……私がいると、誤解を招くらしいの。……そんなんじゃないのにね。」

「え!孝義くん再婚するの!?」


まいらの顔色が変わった。


「……いずれは、そうなるでしょうね。周囲がほっとかないもの。……まだ喪が明けたばかりなのに……かわいそう……。」


涙ぐむ母に、まいらは内心、舌打ちをした。


母のこの、いかにも、か弱いところが、まいらは苦手だった。

幾つになってもお姫さま気質で、無条件に「守ってあげたい」と周囲を思わせるのは、ある種の魔性だと思う。
ずるい。



まいらは、自分が人よりしっかりしてるとも、強いとも思わない。

むしろ、何の特技も取り柄もない平凡な子だと自覚している。

年相応に、父や祖父、なくなった祖母には甘えたし、学校では良くも悪くも目立たない、ふつうの子だ。


だが、母親に対してだけは、小さい頃から甘えることができず、むしろ、母親が悲しい顔をしないようにと気遣ってきた。

決して仲が悪いわけではないが、当たり前の親子関係とは歪んだまま……。



「……かわいそう、じゃねーよ。」

かすかな声でまいらがつぶやいた。



聞こえたのか聞こえなかったのか……耳に届いたとしても、自分のことで精一杯なのか……希和子はティッシュにむせび泣き、鼻を掻み……それから、しみじみと言った。

< 575 / 666 >

この作品をシェア

pagetop