いつも、雨
希和子は娘の決意にうなずき、それから笑顔を見せた。

「じゃあ明後日、一緒に行って、ご挨拶しよっか。……暑いけど、お着物のほうがいいかな。……いらっしゃい。準備しましょう。」


まいらもまた笑顔になり、希和子とともに桐の和箪笥が並んだ畳敷の着物部屋へと向かった。



亡くなった佐那子の結婚してからの着物、天花寺家に嫁いだ由未が生まれてから嫁ぐまでの着物、希和子が竹原家に養女として迎えられた少女のときからの着物、そしておくるみから、やっと肩上げのとれたまいらの着物……。

おびただしい数の着物の中から、夏用の絽や紗の涼やかながら愛らしい柄のものを出して並べた。


「おばあちゃん、私には寒色系の着物が似合うってゆってた。」

「そうね。寒色系なら由未お姉さんのお着物だけど……夏はあまりお召しになってないから、少ないのよね。……今度、ちゃんとまいら用の夏のお着物、作りに行こうね。……とりあえず、明日は……私の着てたのから選ぼうか?」


佐那子は、希和子に暖色系の柔らかい雰囲気の着物をたくさん作ってくれたが、夏の着物は淡い色が主体なので、寒色も暖色も大差なく着こなせるような気がする。


それでも乙女ちっくだったり、上品すぎる着物たちのなかから、まいらが選んだのは、淡い花色の、古い、硬い着物だった。


「これ、なぁに?他のと手触りが違う。ごわごわしてるけど冷たい。化繊?」

「ああ、これ。ラミーって言う麻の小紋よ。涼しいけど、私には硬かったかな。……着てみる?」


食い入るように見ているまいらに、希和子が羽織るよう勧めた。


確かに、硬い。

しかし、もともと、光沢のある絹の柔らかものより、パシッとした紬や、しゃきっとした江戸小紋に惹かれていたまいらは、ラミーの着物を気に入ったらしい。



「じゃあ次は帯ね。」


希和子は順番に着物を片付けながら、夏の帯を出して並べた。


「これ!絶対これがいい!季節ぴったり!」

「……そうねえ……うん、ちょっと地味だけど、夏休みっぽいかな。」


まいらが選んだのは、白地に藍で濃淡をつけた朝顔を織り込んだ逸品だった。


着物と帯が歳より大人っぽい気がするので、帯締めと帯揚げは明るい薄桃色か、薄い黄色か……。


「どっちも出しといて、薫くんに選んでもらおっか。」

「うん。そだね。」
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