いつも、雨
着付けはともかく、帯も薫に見てもらうことになるだろう。

佐那子亡き今、竹原家の誰よりも、由未の夫の天花寺恭匡と、桜子の夫の薫の2人が、和装に詳しい。


「薫くん、ほんっと、頼りになるわぁ。」

「うん。恭匡おじちゃまより、聞きやすいしね。」


素直にそう言ったまいらを、希和子は慌てて窘めた。


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翌日の夕方、薫がいつものように、まいらの家庭教師としてやってきた。


「薫くん薫くん!着物のコーディネート、みて~。」

「着物?まいらの?……浴衣じゃなくて?」

「……お茶のお稽古に浴衣はあかんやろ……。」


呆れたように、まいらがぼやいた。


「お茶のお稽古?明日の?とうとうまいらも習うってこと?……ふはははははははは。」


突然、薫が胸を張って笑い出した。



きょとんとしてるまいらに、薫は得意げに言った。

「やっと俺ら、一番下っ端卒業っちゅーことやな。いいか、まいら、これから兄弟子の教えをしっかり聞くんやぞ。」

「……薫くん、子供みたい……。まあいいけど。ゆうこと聞くからぁ、帯揚げと帯締め、みて~。」


まいらに腕を引っ張られ、着物部屋に入った。



衣紋掛けに掛けられたラミーの着物を視て、薫は首を傾げた。


「これ?装束みたいな生地やな。帯は、これ?え?まいらが着よるん?……おとなっぽすぎひんけ?」

「やっぱり?でも、子供っぽいと思われたくないから、これでいいねん。」

「ふーん?……帯揚げと帯締めは、これ?候補?……なるほど、そしたら……こっちかな。ピンク。黄色のほうが映えるけど、こっちのこのピンクは上品でええんちゃう?」


薫の意見を真剣に聞いて、まいらはうなずき、黄色い帯揚げと帯締めは和箪笥に片付けた。





まいらの勉強につきあっていると、要人が桜子を連れて帰宅した。

程なく義人も帰宅し、みんなで夕食に鰻重を食べた。





その夜。

家族と同じようにあてがわれている桜子と薫のためのお部屋に入ってから……薫がぼそぼそと言った。


「なあ?俺らも、夏の着物、作らへん?」


桜子は、苦笑いして見せた。

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