いつも、雨
かわいがってるといっても過言ではないだろう。

家庭教師として、妻の異母妹としてだけではなく……薫のなかの野生の勘みたいなものが、まいらに対して、ほっとけない何かを感じているらしい。

性格的に危ないとも思わないのだが……。


……普通の子……だよなぁ……。

なのに、どうして、こんなにも……心配なのだろう。


何となく……本当に、わけがわからないまま、何となく、薫はお稽古が始まっても、自分が指導者のように見守っていた。

もちろん自分のお点前の時には、それどころではなかったけれど。






「終わった……。」

宗匠が席をはずされるのを待って、まいらは足を投げ出した。


「お疲れ様。足、大丈夫?痺れてない?」


希和子に問われ、まいらは力無くほほえんだ。


「……なんべんも痺れて、感覚わからんくなったし、もう、ようわからん。」

「俺らと違て、お点前とか、水屋仕事で立たれんかったからなあ……。おつかれさん。よぉ、がんばったな。」

薫はそう言って、ぽんぽんとまいらの頭を軽く叩くように撫でた。


「……うん。がんばった。でも、疲れた。しかも、汗だく。早く帰ってお風呂入りたい。」

しとどに汗を流して、まいらはそう訴えた。


「まあ、割稽古は来週からやし、いいんちゃいます?後片付け、僕がやっときますから。先にあがってください。」

「準備もしていただいたのに。まいら、足、のばして、少し待っててね。後片付けしてくるわ。


清昇の言葉に甘えるわけにもいかず、希和子が立ち上がった。

が、清昇は、慌てて薫に耳打ちした。


薫の目が爛々と輝いた。


「や。今日は、帰ろ。……寄りたいとこがあるねん。間に合わへん。」

「……急ぐの?」

「うん。拝観時間の受付、四時半。」


薫の返答に、希和子は目をぱちくりさせ、それから、ああ……と得心して頷いた。


「そうね。ごめんなさいね。御言葉に甘えて、今日は、お先に失礼しますね。清昇くん、ありがとう。」

「いえいえ。急いでください。間に合うと思うけど。」

「ありがとう。」


重ねてお礼を言って、希和子は帰り支度を促した。

桜子とまいら、そして玲子には、わからないまま……薫に急かされて、お茶室を出た。




「……拝観時間ってゆーてた?お寺行くの?」

車の中で、桜子が薫に尋ねた。
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