いつも、雨
「……あー……。……とりあえず……、座ろうか。」

孝義が、そう言って、まいらを解放した。



まいらは、崩れ落ちるようにへたり込み、畳に手をついて嗚咽し始めた。


希和子が、あわててまいらの近くに駆け寄って座り、背中をさすってなだめようとした。

……しかし、気の利いた言葉は出てこなかった……。


まいらも、いつまでも子供ではない。

祖父の要人と、亡くなった佐那子の間に、これまで何一つ波風が立ったことはなかった……なんてことは思っていない。

家族は何も言わなくても、悪い噂は、外から聞こえてくるものだ。

父の義人が若い頃、かなり酷く遊んでいたことも聞いたことがあるし、祖父の要人がかつては花街に愛人を囲っていたらしいという噂も知っていた。


……でも、まさか、祖父が……親戚の大叔母様と、そんな関係だったなんて、知らなかった。


まいらには、誰も教えてくれなかった。


それどころか、……なんて?

何て、言った?



頭が真っ白になって、こまかいことは、吹っ飛んでしまった。

けど、たしかに、言った。

家族を捨てる、と。


何度も?

何度も、家族を捨てようとしたってこと?



いつ?

それって、いつの話?



……そうか……昔の話じゃないんだわ……。

おばあちゃんが生きてるときも、死んじゃってからも……関係なく、おじいちゃんは橘のおばさまのほうが、大事ってことなんだ……。

私も……私のことも……おじいちゃんは、簡単に捨てちゃうんだ……。


そんなに……おばさまがお好きなんて……知らなかった……。

私、何も……知らなかった……。


……みんな、知ってたの?


パパも、由未ちゃんも……知ってたの?


自分が、いらない子だって……知ってるの?





まいらは、希和子を見上げた。

両の目から滝のように涙が滂沱している娘が不憫で、希和子もまたあらたな涙を浮かべた。


「いつから……」

まいらの質問に、希和子は困ったように首を傾げた。


……先ほど、舅の要人から、ずいぶんと感謝されていることを知り驚いたが……それも、結局のところ、希和子は血縁ではないからだろう。


実の息子の義人は、要人の期待する後継者にはなれないと、見放されてしまった。

娘の由未と百合子などは、はなっから何の期待もしていないようだ。

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