いつも、雨
……そういえば……さっき、お義父さん、百合子さんのこと、呼び捨てにしてらしたけど……まいら、気づいてしまったかしら。

百合子さんが、お義父さんと、橘のおばさまの娘さんで……まいらにとって、由未おねえちゃんと同じように、血の繋がりのある叔母にあたることを。




いつまでも返答できない希和子を、まいらは不満そうに見ていた。


見かねて、孝義が助け船を出した。

「希和子に聞いても、埒があかへんやろ。……まあ、祖父さんを問い詰めても、なんか、開き直ってはるっぽいし、藪蛇かもしれんしなあ。……とりあえず、まずは、オヤジさんと話してみれば?」



まいらは、孝義の言葉に素直にうなずいた。

が、すぐにまた涙を浮かべて、訴えた。

「……家で、おじいちゃんの顔見たら……、私、キレてしまいそう……。」


「うん。今も、飛び出してしまいそうやったもんな。」

至極真面目な顔で、薫がうなずき、まいらに同調した。


「止めてやれや。薫が。」


孝義に突っ込まれて、薫は肩をすくめた。


「無理。この狂犬を止めようのは、猊下だけやろ。」


……ちっ……と、小さく孝義は舌打ちした。


「孝義くん。恥ずかしい。」

小声で希和子が孝義の舌打ちをたしなめた。



孝義は顔をしかめたが、黙って涙ぐんでいるまいらに、心を動かされた。

……傷ついたまいらを、とても放っておけなかった。


「……わかった。まいら、このまま、うちに来い。もう夏休みやろ?……ちょうど、全国から二十歳未満の寺と檀家さんの子女が順番に合宿に来るから、それに紛れてもいいし、手伝ってくれてもいいし。気が済むまで、居たらええわ。……希和子、帰って、まいらの荷物作ってやって。ほんで、明日にでも、旦那に届けさせて。まいらとゆっくりしゃべれるように段取りしとくわ。」


「え……。孝義くんのおうちに……お泊り……?」

まいらの涙がぴたりと止まった。

そして、口元が緩んだ。



……喜んでる……喜んでるわ、この子……。

多少呆れながらも、希和子は娘の心がほぐれたことに、ホッとした。

反対する理由はなかった。


「ありがたいけれど、お寺のかたがたに、ご迷惑をおかけしてしまわないかしら……。」

母親らしく、希和子は、一応そう言ってみた。



孝義は、不遜に言ってのけた。

「俺の客を迷惑とは、誰も言えんやろ。……てか、もっと迷惑なモンがいっぱい来てるのに、まいら1人ぐらい増えたても、誰も文句ないわ。」
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