いつも、雨
「……もっと迷惑なモンって……」

「ああ、裏方の後釜にって、見合いの延長みたいなもんや。断わっても断わっても、勝手に押しかけて来て……いや……そうか……。」


孝義はわずかな黙思のあと、ニヤリと笑って、冗談っぽく言った。


「逆に、まいらを理由にして、追い返せるかも。協力してくれるけ?」



「うん!する!追い返す!蹴散らす!」

まいらは、握った拳をふるふると揺らして、力強く宣言した。


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「と、いうわけで……、まいらは本山の青少年育成行事に参加させていただけることになりました。この夏休み中に、得度していただけるように、がんばってくるそうです。」


希和子は、夕食の時、舅の要人と夫の義人に、そう報告した。



突然「と、いうわけで」と切り出されて、要人は眉間に皺を寄せ、義人は首を傾げた。


「……まったく話が見えへんねんけど……まいらは、僧侶の資格を取りたいのかい?」


義人に尋ねられ、希和子はこくこくとうなずいた。


「それは……孝義くんの養子にでもなるか、養子に嫁ぐかして、あの寺を継ぐということか?」


要人の質問には、大慌てでぶるぶると首を横にふって、否定した。


神妙な希和子の表情に、要人は、納得はしていないものの、それ以上の追及を諦めた。


「……まあ、悪いようにはならんだろ。……しかし放置して、寺に迷惑をかけないようにな。希和子、しょっちゅう様子を見に行ってやりなさい。義人も、一度、挨拶してくるんだな。くれぐれも、粗相がないように。」


要人は、明らかに不機嫌だった。

やはり、孫のまいらの不在はおもしろくないらしい。



「はい。明日、早速行って参ります。……お父さんも、ついでの時にでも、顔を見せてやってください。」

まだ事情を何も聞いていない義人は、暢気にそんなことを言った。





その夜、

寝室で、希和子は義人に、要人と領子の会話をまいらに聞かれてしまったことを伝えた。


「……そうか。かわいそうに。……それで、寺に逃げたのか。孝義くん、よく受け入れてくれたな。怪我の功名だな。」
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