いつも、雨
義人は、珍しく独りで他家へお泊まりすることになった娘を想い、ため息をついた。
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その頃、まいらは混乱していた。
祖父の要人の不倫問題だけでも悩ましいのに、……孝義の後妻候補達の存在は、思った以上に厄介で深刻だった。
てっきり、お寺の仕事を手伝いに来ているのだと思っていたら、何と妙齢の女性達は孝義の自宅に入り込み、家事を分担しているという。
「……ハーレムやん。」
憮然としてそう呟いたら、孝義に頭をはたかれた。
「阿呆か。俺1人やと不摂生になりがちやから、家のことをしてくれてるだけや。」
「夜は?孝義くん家(ち)に泊まってはるの?食事は?一緒?」
必死の形相のまいらがかわいくて……孝義の口元が緩んだ。
「……そんなわけないやろ。阿呆やなあ。詳しく聞いてへんけど、研修所に泊まってはる人と、馴染みの旅館やホテルに泊まってはる人と……ああ、自分のとこのマンション持ってる人もいるゆーてたかな。知らんけど。……食事も、ゆっくりできひんのはストレスやから、俺の分だけ準備してもろてる。」
まいらは、少しホッとしたが、すぐにまた心配そうに尋ねた。
「私は?私も研修所に泊まるの?その人らと一緒に?」
「はあ?さすがに、そんな無責任なことできんわ。大事なお嬢さん預ったのに……。部屋はナンボでもあるし、うちに泊まり。和室に蒲団やけど。ええけ?」
「うん。何でもいい。野宿じゃなければ、藁でもいい。ご飯は?ストレス?別々?」
改めてそう聞かれて、孝義は笑った。
「違う違う。ストレスは、下心満々で寄ってくる女の存在。まいらは、わかりやすいから、かまわんよ。……てゆーか、寝る時以外は、なるべく俺の目の届くところに居ててくれると、ありがたい。」
「……どういう意味?」
キョトンとしているまいらに、孝義はにやりと笑ってみせた。
「虫除け。」
「……虫?……後妻候補さん達のこと?……虫……なんや……。」
まいらの頬が緩む。
孝義は、大仰に口元を両手で覆って見せた。
「失言した。誰にも言うなよ。……妻が死ぬのを待ってたような連中、ほんまは、顔も見たくない、っちゅうんが、本音や。」