いつも、雨
……妻……。

どくんと、まいらの胸が跳ねた。


孝義くんが既婚者なことは、小さい頃から当たり前のことだったはずなのに……やっぱり、改めて「妻」とかって聞くと、何て言うか……生々しい……。



「せやし、まいらが居てくれたら、図々しくせまって来られへんやろしな。」

「……てことは、孝義くん……やっぱり、せまられてるんや……日常的に……。」


じと~っとまいらに見られて、孝義は何も言えなくなってしまった。


実際、女達は、隙あらば孝義に媚び、口説き、体当たりで既成事実を作ろうとやって来る。

皆、良家の子女のはずなのだが、そのあさましさにも、孝義は辟易していた。


寺の仕事を手伝っていた希和子を嫌味と悪口で追い出したのも、彼女たちとその親たちだ。


さすがに、まだ中学生のまいらには手を出さないだろう……。



孝義の考えは、わかる。

わかるが……まいらは、少なからず傷ついた。



結局、私は、対象外ってことじゃない?

孝義くんにとっても、その女性達にとっても……しょせん、ただの子供としか思われないってことよね……。


釈然としない。

……くやしい。


でも、こうして、襖1枚向こうに孝義くんが眠ってると思うと……うれしくて、そんなことどうでもよくなってくる。


怖い夢を見たとか言えば、お布団に入れてくれるかしら。



……て……それじゃ、完全に子供になってしまうわ。



どうすれば、孝義くん、私を意識してくれるのかな……。

もう子供じゃない、って……思ってくれるのかな。



あーあ。

お着物で成長アピールするつもりだったのになあ。

せっかく途中までは手応え感じてたのに……。


それもこれも、おじいちゃんのせいだわ。

まさか、おじいちゃんの不倫デートに遭遇するなんてなあ。

……気持ち悪い。

よく言う、老いらくの恋ってやつかしら?

おじいちゃんも、橘のおばさまも、気持ち悪い。

あんなにしわしわになっても、好きなの?



わかんないわ。

……わかんない。


でも……孝義くんも、お母さんと同い年だから……すぐしわしわになるのよね……。


それでも、私……孝義くんを……そうね、しわしわになっても、ハゲても、孝義くんなら、好きだと思う。



おじいちゃんも、そういうことなのかな……。


< 600 / 666 >

この作品をシェア

pagetop