いつも、雨
孝義は苦笑した。

「……いや、堪忍。大企業のお嬢さまにさせることちゃうな。」

「大寺院の猊下が何をおっしゃいますやら。」


義人はそうつっこんでから、改めて頼んだ。


「マイペースで、友達と遊びに行くこともほとんどなくて、お小遣いの使い道がないような子やから、金銭感覚も浮き世離れしてると思うけど、料理は手伝ってくれてるから、まあ、酷いもんは出さんと思うわ。希和もちょくちょく、様子、観に来るゆーてるし、孝義くん、まいらのこと、よろしくお願いします。」

「……なんか、本末転倒してる気がするけど……とりあえず、まいらの気が済むまで、お預かりします。……ほな、俺は失礼するけど、まいらと話してやってください。」


寺からの呼び出しに震えるスマホに急かされて、孝義は出て行った。




取り残された父と娘は、顔を見合わせて、苦笑し合った。

「話って……なんか、気がそがれちゃったな。まさか、まいらが孝義くんの押し掛け女房みたいなマネするとはね。……思い切ったなあ。」


義人は、敢えて、そんな風に茶化した。


「……だって、ほんまに、押し掛け女房みたいな人達が何人もいるから。私も対抗することにしてん。……ただ居候するだけじゃ、虫除けにもならないと思って。」


まいらはそう言ってから、義人の腕にぴとっとくっついた。



……甘えてる……んだよな?

義人は、まいらの頭を撫でようとして……髪がもつれていることに気づいた。


「シャンプーとリンスも、持ってきてあげないとな。ごめん。今日は着替えと宿題しか持って来てない。……必要なもの、書き出してくれる?すぐまた届けに来るから。」

「わ。うれしい。ありがとう。……孝義くん、石鹸シャンプーしか使わないから、奥さんが亡くなってからリンス切れたまんまみたい。ごわごわ。」

「……レモンでもお酢でも、お湯に混ぜれば、中和できるけど?」


さらりとそう言われて、まいらは赤くなった。


……確かに、その通りだ。

リンスがない!としか思えなくて、代用品とか、理屈とか、何も考えようとしなかった。


応用の効かない自分に恥じる娘を、義人はよしよしと撫でた。



大好きな父に甘やかされて……まいらは、すんと鼻をすすった。

理由もなく、泣けてきた。

……ううん、理由は、ある。

わかってる。


けど、……切り出しづらい……。
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