いつも、雨
……まあ……わかんないよな……。

てか、そんな気持ち、わかんないまんまのほうが、幸せだよな。


どう言えば、伝わるのかな。



義人は、ため息をついた。



ジロリと、無言のまま、まいらが義人を睨んだ。


「……そんな怖い顔せんと。……んー、せやなあ……何てゆーたらいいんかなあ……愛するひとって、増えるもんなんやけど……それって、意味わかる?」


義人は、性愛ではなくアガペーで説明しようと試みた。



まいらは、嫌そうに言った。

「やだ。気持ち悪い。増えへんよ。1人でいい。他の人と好きな人を共有したくない。」

「あー、いや。そうじゃなくて。……たとえば、俺は、希和子を愛してるし、大切に思ってるけど、それと同じぐらい、まいらのことが愛しいし大事なんやけど……まいらは、俺も、気持ち悪い?」



まいらは、顔をしかめた。

「……ずるい。それって、比較対象外やと思う。私は、娘やもん。血のつながってる、家族やもん。」


「うん。そう。家族。そういうことなんやけどな。つまり、お父さんは、お母さんのことを家族として、ちゃんと愛してはったし、大切にしてはったよ。……それは、まいらも、わかるやろ?」


煙に巻かれたような気分になって、まいらは首を傾げた。


それから、まじめな顔で、父に尋ねてみた。

「一番好きな人が橘のおばさまなのは、おばあちゃんと結婚しても変わらなかったの?それって、おばあちゃんに対して、失礼じゃないの?」


義人は、やれやれと肩をすくめてみせた。

「人の気持ちは、そう簡単に割り切れるもんじゃないだろ。それに、一番好きな人と結婚できるラッキーな人ばかりでもないし。一番好きな人のはずが、結婚して、好きじゃなくなる場合もあるし。……結婚ってさ、してしまった後は、感情よりも責任感を優先させるべき時のほうが多いんちゃうか?」


「……わかんない。……結婚したことないもん。」

むすっとして、まいらはそう答えた。


拗ねているような返答に、義人は肩をすくめて……、それから、まいらにも実感できるような例えを持ち出した。


「まいらも知ってると思うけど……、孝義くんは、高校時代、お母さんのことを好きやったけど……、お見合いで御結婚された美弥さんを最後まで大切にしてはったやろ?それって、惚れた腫れたとはかけ離れた夫婦関係やったと思わんか?」
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