いつも、雨
まいらの顔が歪んだ。

さすがに、好きな男を例に出されるのは、堪える。


わかっていて義人は、無神経とも取れることを言ってのけた。

「でも、孝義くん、馬鹿正直やから、希和に惚れてたこと、奥さんに隠し切れへんかったやろうなあ。……せやのに、希和がいつまでもウロチョロしてて、奥さん……けっこう、きつかったんちゃうか?……美弥さんのほうは、孝義くんに心酔してたから……仕方ないこととして受け入れてはったかもしれんけど……。……いや、それって、諦め、かなあ……。」


まいらの眉間に皺が寄った。

「……お母さん……無自覚に無神経やもんね……。一生懸命やってはるのはわかるけど……。」



義人は、めっ!と、まいらを窘めた。


小さく口の中で、ごめんなさいとまいらが呟くのを待ってから、義人は言った。


「……希和のそーゆーところがまた、俺や孝義くんの庇護欲をくすぐったりするんだけど……気に障る人がいて当たり前やわな。……まいらは、お母さんに育てられた分、希和よりも、よく気がつくし、希和のいたらないところに、昔からイライラしてるもんなあ。……堪忍やで。」


「お父さんが謝ることじゃないのに。変なの。……お父さん、お母さんの保護者みたい。」


まいらにそう言われて、義人はくしゃっと笑った。

「そやで。まいらも、希和も。同じように、何からも、誰からも守ってやりたいし、……愛してるよ。」



うおっっと!!!


まいらは、思わず、のけぞりそうになって、踏ん張った。


驚いた。


実の父親からの「愛してるよ」なのに、破壊力、強いわ……。



……おおお。

胸が、ドキドキしてる。


愛してる……か……。



しみじみと、まいらは、愛について考え始めた。


沈思する娘を、義人が目を細めて見つめていた。


……本当に……少女から女性へ、変わろうとしているんだなあ……。

淋しいけれど、娘の成長を見守るしかないんだよな……。


いや……。

こうして、娘が思い悩んでいるのを目の当たりにできるって、幸せなことだよな。


……桜子と再会した時には、彼女はとっくにオトナの女性で……それはそれで、まあ、眩しいほどに魅力的なんだけど……いや、そういう問題じゃなくて……。



義人は、ムクムクと湧き上がる悪い癖を理性で抑え込む。


……本当にな……比喩でもなんでもなく、愛は増えるんだよな……。

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