いつも、雨
「まあ、そうかたくならないで。……いつもみたいに、おじいちゃんと呼んでくれたほうが、うれしいんだが……。」
至近距離でじっと見つめておねだりされて、薫は笑顔でうなずいた。
「わかりました。ありがとうございます。おじいちゃん。」
要人もまた、にっこりと笑ってうなずいた。
……さすがに、会社では、社長と呼んだほうがいいと思うのですが……。
至極当たり前な注進をすべきか控えるべきか……第2秘書の芦沢啓也は、黙って葛藤していた。
筆頭秘書の原が、桜子を呼びに行ったわずかな時間のはずなのだが、何年たっても芦沢は要人の前では緊張していた。
別に、頭ごなしに怒られたこともないのだが、社長には黙っていても威厳があった。
そのカリスマ性の前には、誰も逆らえない。
実のご子息の義人さんでさえ、社長には意見することはおろか、たわいない日常的な会話にも気をつけている有様だ。
それなのに……この薫という外孫の婿殿は、初対面の時から社長に臆せず懐いていた。
よほど鈍いのか、それとも、社長の期待する通り、大物ということだろうか。
壁際で控えて立っていた芦沢は、秘書課の女子社員がアイスコーヒーとケーキを出すのを手伝いつつ、2人の様子をうかがった。
社長は桜子に対するほどデレデレではないし、目の前の薫をまだまだ観察しているようだ。
「……そういや、まいらの勉強だが……夏休み中は、お休みにするのかい?」
女子社員が出て行くのを待って、要人が尋ねた。
「へ?いや?何も聞いてませんが。休み明けにテストもあるみたいやし、普通にやりますよ。……ああ。そうか。まいら、家に帰ってないんですよね。……そうか……。じゃあ、帰りに、孝義さん家(ち)に寄ることになるのか……。何か、緊張しますね。俺の兄は、孝義さんをめっちゃ慕ってるんですけど、俺は関わりなかったから、けっこう怖いんですよ。あの人。カリスマなんですかねえ。」
……社長は怖くなくて、坂巻孝義猊下にはカリスマを感じるのか……。
驚いて、芦沢は、不躾なほどに、しげしげと薫をみた。
薫は平然としていたが、要人の表情が曇った。
「……そうか。すまない。君にも迷惑をかけるな。……まったく、どうして、突然、寺で世話になることにしたんだろうか。……将来的に、寺の仕事を手伝いたいということだとしても、せめて大学生になってからでいいと思うのだが……。」
至近距離でじっと見つめておねだりされて、薫は笑顔でうなずいた。
「わかりました。ありがとうございます。おじいちゃん。」
要人もまた、にっこりと笑ってうなずいた。
……さすがに、会社では、社長と呼んだほうがいいと思うのですが……。
至極当たり前な注進をすべきか控えるべきか……第2秘書の芦沢啓也は、黙って葛藤していた。
筆頭秘書の原が、桜子を呼びに行ったわずかな時間のはずなのだが、何年たっても芦沢は要人の前では緊張していた。
別に、頭ごなしに怒られたこともないのだが、社長には黙っていても威厳があった。
そのカリスマ性の前には、誰も逆らえない。
実のご子息の義人さんでさえ、社長には意見することはおろか、たわいない日常的な会話にも気をつけている有様だ。
それなのに……この薫という外孫の婿殿は、初対面の時から社長に臆せず懐いていた。
よほど鈍いのか、それとも、社長の期待する通り、大物ということだろうか。
壁際で控えて立っていた芦沢は、秘書課の女子社員がアイスコーヒーとケーキを出すのを手伝いつつ、2人の様子をうかがった。
社長は桜子に対するほどデレデレではないし、目の前の薫をまだまだ観察しているようだ。
「……そういや、まいらの勉強だが……夏休み中は、お休みにするのかい?」
女子社員が出て行くのを待って、要人が尋ねた。
「へ?いや?何も聞いてませんが。休み明けにテストもあるみたいやし、普通にやりますよ。……ああ。そうか。まいら、家に帰ってないんですよね。……そうか……。じゃあ、帰りに、孝義さん家(ち)に寄ることになるのか……。何か、緊張しますね。俺の兄は、孝義さんをめっちゃ慕ってるんですけど、俺は関わりなかったから、けっこう怖いんですよ。あの人。カリスマなんですかねえ。」
……社長は怖くなくて、坂巻孝義猊下にはカリスマを感じるのか……。
驚いて、芦沢は、不躾なほどに、しげしげと薫をみた。
薫は平然としていたが、要人の表情が曇った。
「……そうか。すまない。君にも迷惑をかけるな。……まったく、どうして、突然、寺で世話になることにしたんだろうか。……将来的に、寺の仕事を手伝いたいということだとしても、せめて大学生になってからでいいと思うのだが……。」