いつも、雨
「へっ!?おじいちゃん、聞いてないんですか?」


要人の嘆きに、薫は、わざわざ素っ頓狂な声を挙げた。


「……。」


大仰な薫の反応が、要人を不安にさせた。


言葉を選び、慎重に尋ねた。


「……何か……あるのか?……私は、あれの母親から、得度するために、寺の青少年育成行事に参加すると聞いたが……。」


薫は何度か大きくうなずいた。

「ああ、そうですね。うん。……俺と桜子も、昔、神戸の別院で、似たような行事の手伝いをしたことありますよ。」

「……ほう。ご縁があるんだねえ、君たちも。」


何となく釈然としない。

薫くんは、何かを、知っている……。


要人は拭いきれない疑問を、薫にぶつけるかどうか逡巡して……やっとのことで口にした。
 
「その……なんだ……、まいらは、まだ中学生なのだが……孝義くんとは……その……どの程度の関係なのだろうか……。」


ぶぶっ……と、薫が笑いを堪えて、結果、チョコレートクリームを吹き出した。


「びっくりした!わ、すみません!芦沢さん!……大丈夫です!……ハンカチハンカチ……。あった!ああ……シミになるかな?」


慌てて自分のハンカチを差し出した芦沢に謝って、薫は自分のハンカチでチョコクリームを拭った。


そして、涙目で要人に謝った。


「おじいちゃん、ごめんなさい。びっくりして、粗相しました。……あー、びっくりした。や。まいらが惚れてるのは確かですけどね、孝義さん、さすがに、まだ、そういう気持ちにはなってないと思いますよ。あのヒト、見たまんま、めっちゃ真面目~なヒトですから。もし、まいらと恋愛状態とかなったら……いや、そうなる前に、先に、義人さんたちに報告しよーと思いますよ。……それに、まいらのことは、まあ、今は、別の意図があるんちゃいますかねえ。」


「……ほう?」


別の意図とは?何のことだ?

いや、それより、……では、どうして、今のこの時期に、まいらは孝義のもとへ押しかけたのだ?


しかも、両親が止めなかった理由は、何だ?



要人は、さらに尋ねようとして……やめた。

薫は、確かに、何かを知っている。

おそらく、そのことを内緒にする気はないから、匂わすような言いかたをしたのだろう。
   
では、私が根掘り葉掘り聞かなくても……いや、無関心を装ったほうが、あっさり話し始めるかもしれない。

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