いつも、雨
そう言ってから、薫は一息ついて、再び言葉を継いだ。


「……てゆーか、まいらがここに籠城してる理由を、おじいちゃんは知るべきやと思たんです。……理由がわからんまま、まいらの不在に苛立ってはるより……おじいちゃんにも、反省もしてほしいし、イロイロ考える時間が必要かと思って。」



まいらは、おそるおそる尋ねた。

「おじいちゃん……そのぉ……怒ってた?……それとも……傷ついてはった?」



ふっ……と、薫が優しい微笑みを見せた。




……ふ~ん……まいらちゃんには、そんな顔、見せちゃうんだ。

ちょっと……妬けるなあ……。


桜子は、ずっと自分にだけ一途だった薫が、他の女の子に対してこんなにも親身なのを、初めて見た。




そんな妻のもやもやに気づくわけもなく、薫はまいらに言った。


「怒るわけないやん。……むしろ、おじいちゃん、反省しとった思うで。しょんぼりしてた。……おじいちゃん、まいらのこと、めっちゃ大切に思っとーのが、よくよくわかって、俺、ホッとしたわ。……せやし、大丈夫や。夏休みが終わるまで、ここで遊んどいたらええんちゃう?……それで、気が済んだら、家に帰り。」



まいらの目が潤み、対照的に、孝義の片頬が引きつった。



……うちに居るんは……遊びかよ。

もっと切羽詰まったものを感じたから、まいらの心が壊れてしまわないために置いてやったつもりなのだが……。


いやはや。

たくましいお嬢さんだな。


ただ泣いて過ごすようなタマじゃなかったな。


ココにはびこる女達を駆逐し、台所仕事を乗っ取り、結局、俺の仕事場にまで来るとか……。


……うーん……。


たくましすぎて、こりゃ、確かに、清昇では手に負えないか?


……むしろ、こいつ……薫みたいな男のほうが、まいらには合うのかもしれない……。


孝義は、自分のことはあくまで対象外としたまま、まいらの相手に想像を巡らせていた。



まだ不安そうなまいらに、桜子が言った。

「おじいちゃん、まいらちゃんに、全部お話しするって、おっしゃってたわ。……大丈夫よ。」


まいらは、小さくうなずいて、それから、不安そうにつぶやいた。


「……このままココに居て、いいの?」


まいらの視線が彷徨い、孝義を捉えた。



すがるような瞳に、孝義の庇護心がむくむくと大きく膨らんだ。

「かまへんゆーてるやん。……こんな美味い飯、作ってくれるんやったら、むしろ、帰したくなくなるわ。」
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